2023年12月

ベン・バーバー、CFA
フランクリン・テンプルトン 債券グループ、ディレクター、米国地方債

FRBの積極的な金融引き締め政策は終わりに近づく

米国では堅調な労働市場やインフレ圧力の低下を背景に個人消費や生産活動が回復しており、底堅い米国経済を受けて、FRB(米連邦準備制度理事会)は2023年を通じて利上げを実行しました。実際、景気は堅調な足取りを維持している一方で、インフレ圧力は緩和しているものの「粘着性」が見られるため、運用チームではFRBは2%のインフレ目標に向けて金融引き締めを長期化する慎重な姿勢を継続すると予測しています。

今後、債券投資家にとってより魅力的な投資環境が期待される

2023年は、FRBがソフトランディングを達成する可能性を投資家が見極めようとしたため、債券市場全体でボラティリティが高まりました。こうした動きは米国地方債市場にとって逆風となり、同セクターのリテール向けファンドでは大幅な資金流出に見舞われました。一方で、運用チームではFRBによる利上げサイクルは終了した可能性が高いと考えています。ただし、インフレを持続的に低下させるためには、2024年の大部分を通して、金利を現状維持またはそれに近い水準に維持する必要があると考えています。良いニュースとしては、中央銀行の金融政策に対する不透明感が払拭されれば、ボラティリティが低下し、2024年にかけて利回りの低下が債券投資家にとって追い風となることが期待されるということが挙げられます。

米国地方債市場のポイント

1.テクニカル面は今後、米国地方債にとって有利に働く可能性

FRBの金融政策に対する先行き不透明感や米国経済の底堅さにより、2023年の米国地方債の需要は低調に推移しました。しかし、業界内の情報からは、アセット・アロケーションのマネージャーは多額の現金や現金同等物を保持しており、ボラティリティの低下や魅力的な投資機会が訪れるのを待っていることがわかっています。現在、米国地方債の利回りは歴史的な高水準にあり、特に税調整後の利回りを重視する投資家にとって魅力的な水準にあるため、今後、多くの投資家が地方債市場に回帰することが予想されます。また、この資産クラスの特性である長期のデュレーションは、足元で人気のある短期金融市場商品に伴う再投資リスクを低減できる可能性があります。地方債市場への更なる大きな資金流入には、米国債の利回り曲線がフラット化し、右肩上がりの順イールドへと正常化することが必要となります。持続的な需要増加は、今後数カ月間にわたって地方債市場のパフォーマンスを下支えするでしょう。

2. 発行体のファンダメンタルズは引き続き安定

地方債市場のファンダメンタルズは引き続き安定しており、中長期的にこの資産クラスを下支えするものと考えています。経済活動の減速やコストの上昇により、一部の地方自治体では、財政安定化基金(レイニー・デイ・ファンド)がコロナ対策のための連邦政府の補助金によって強化され、その後の経済回復期間においても拡大し続けています。加えて保守的な予算編成および厳格な財政規律を維持したことで引き続き高い水準が維持されています。そのため、州政府は景気後退など今後起こりうる課題に対処するための財政余力を多く残しています。もちろん、賃金の上昇、労働力不足、借入コストの上昇、景気減速に対処するには、規律ある財政アプローチが依然として重要であることに変わりはありません。

3.魅力的で幅広い投資機会

地方債の税引き後の利回りはここ数年来の高い水準で推移しており、税調整後利回りを重視する投資家にとって特に魅力的となっています。インフレ圧力は低下傾向にあり、政策金利は利上げサイクルにおける最終到達点(ターミナルレート)に達したと思われることから、今後は借入コストが低下し始める可能性があります。その結果、投資家はこの歴史的に魅力的な利回りを確保するために、投資資金を地方債に再配分しようとする可能性があります。更に、社債と比較すると地方債(非課税債)はデフォルト率が低い傾向にあります。つまり、高格付けセクター全般で魅力的なリスク調整後リターンを求める顧客にとって、この資産クラスは強力な選択肢となり得ることを意味します。

リスクについて

すべての投資は、元本割れの可能性を含むリスクがあります。投資の価値は下がることもあれば上がることもあり、投資家が投資した全額を取り戻せないこともあります。確定利付証券は、金利リスク、信用リスク、インフレリスク、再投資リスクがあり、元本割れの可能性があります。金利が上昇すると、確定利付証券の価値は下がります。格付けの低いハイイールド債は、価格の変動、流動性の欠如、デフォルトの可能性が高まるリスクがあります。債券格付けや債券発行体、保険者、保証人の信用格付け及び財務内容に変動があった場合、その債券の価値に影響を及ぼす可能性があります。アクティブ運用は、利益の保証または市場の下落からの保護を保証するものではありません。

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