ストラテジストの見解(2023年3月24日現在)

スティーブン・ドーバー、CFA
チーフ・マーケット・ストラテジスト
フランクリン・テンプルトン・インスティテュート

事態が急速に進行し、投資家が不安定な市場に対応していくのが困難な時こそ、一歩下がって3つの重要な問いかけをすることが大切だと考えます。

  1. システミックな金融危機が進行しているのか?
  2. 中央銀行は利上げを中止するのか?
  3. 銀行や金融市場、経済を安定させるために、政策当局はどんなアクションを取ることができるのか?

上記について、我々の現時点の考察は以下になります:

この10年間の低コストの資金調達と安定した預金の滞留は終わりを迎えた:過去10年間、ゼロ金利下では、より魅力的なリターンを提供する金融商品がなかったため、銀行預金は安定した位置にありました。しかし、12カ月前に始まった、米国連邦準備制度理事会(FRB)による4.75ポイントの利上げを受けて、預金者は、より魅力的なリターンとほぼ同じ流動性を有するマネー・マーケット・ファンドなどの別の選択肢を持ち始めました。

金利上昇は、銀行のバランスシートにおける資産サイドに問題を引き起こす: シリコンバレーバンク(SVB)において、ヘッジしていない債券の損失が銀行収益に穴を開け、破綻に至らせたことは明らかです。他の銀行はもっとうまく金利リスクを管理していたかもしれませんが、それら銀行の保有債券やリスクヘッジ戦略、ディスクロジャーは不透明であり、透明性の欠如は不安要因となります。

急速かつ積極的な金融引き締めは、すべてではないにせよ、一部の借り手をリスクにさらすことは間違いない:問題の兆候は、商業用不動産、サブプライム自動車ローンおよびリースに現れてきています。 株式投資家は、不良債権の償却に対する引当金の積み増し分をディスカウント評価し始めています。

最近の中央銀行の引き締めは、ポジティブなシグナルとなる可能性がある:欧州中央銀行(ECB)は先週、50ベーシスポイント(bps、1bpsは0.01%)の利上げを行い、政策当局としては多くの人が考えているほど状況は悪くないと考えているとのメッセージを市場に発しました。同様に、FRBは今週、25bpsの利上げを行い、米国の銀行システムを “健全かつ強靭 ”と見ていると述べました。ECBとFRBは、その行動と言動によって、インフレ率をより受け入れ可能な水準まで低下させるという優先事項に注力し続けられるくらい、金融システムと経済が十分に安定しているとの信頼性を強めようとしています。

預金者を安心させる必要がある:銀行危機が厄介なのは、ひとたび預金者が銀行の財務力に疑問を抱くと、すぐに預金引き出しが行われ、弱い銀行も強い銀行も危険にさらされるからです。米国では、FRB、連邦預金保険公社(FDIC)、財務省が、預金者の信認を得るために預金保険や流動性条項の拡充を通じて大きな手立てを講じました。FRBはまた、他国が米ドルの流動性に対して十分 にアクセスできるよう、他国の中央銀行との米ドル・スワップ・ライン を延長しました。長期的には、銀行規制当局は、新たなストレステストを含めて、銀行を適切に監督するための努力を拡大しなければなりません。

また、当局は必要に応じて、破綻した銀行の合併や統合も行わなければなりません。特に重要なのは、流動性ニーズを満たすために資産売却する際に、将来の評価損の原因となりかねない保有有価証券を見直すことです。また、預金者の信認を高めるため、規制当局には、必要に応じて銀行のリスク管理手法を強制的に変更する権限を与えられる必要があります。

中央銀行は、景気循環リスクについてや、銀行が融資ポートフォリオの質をどのように評価すべきかについて、明確に言及することを避けてはならない:急激で積極的な金融政策は、ほとんどの場合、不況をもたらします。中央銀行は銀行に経済リスクを知らせる必要があり、規制当局は、適切な引当金方針と必要に応じて潜在的な資本増強の必要性を評価するため、ローン勘定のシナリオテストとストレステストを実施する必要があります。これらの査定は、信用の質のサイクルが悪化する局面の前に行われることが必要です。

預金保護の恩恵にあずかっている銀行は、適切な監督と規制を受けねばなりません。銀行の透明性向上がすべての人の利益につながり、さらなる透明性の向上は経済と金融市場の安定に寄与するでしょう。

銀行の資産と負債の流動性のミスマッチにより、銀行はこれまでも、そしてこれからもシステミック・リスクにさらされ続けます。積極的な金融引き締めが始まったことにより、銀行のバランスシートの両側でシステミック・リスクが高まっています。預金者が恐怖心を抱くと、無差別的に資金が逃避する可能性があります。SVBの破綻以降、暗黙の預金保険延長の措置や中央銀行による流動性供給、クレディスイスのUBSへの吸収が行われ、市場の不安は沈静化しました。銀行の不透明な性質上、断定的な結論を下すことには常に慎重にならざるを得ませんが、入手可能な情報からは、システミックリスクは後退していると結論付けております。また、それにより、中央銀行はインフレ抑制に引き続き注力することができると考えます。

リスクについて

すべての投資は、元本割れの可能性を含むリスクがあります。投資の価値は下がることもあれば上がることもあり、投資家が投資した全額を取り戻せないこともあります。株価は、個々の企業、特定の産業やセクター、または一般的な市場環境に影響を与える影響によって、急激かつ劇的に変動する場合があります。債券価格は、一般に金利と反対方向に動きます。したがって、投資ポートフォリオに含まれる債券の価格が金利の上昇に適応すると、ポートフォリオの価値は低下する可能性があります。

テクノロジーセクターのような急成長産業(歴史的に変動が大きい)への投資は、製品の変化や開発のペースが速いこと、科学や技術の進歩や新薬や医療機器の規制承認を重視する企業に対する政府の規制が変化することで、特に短期的に価格変動が大きくなる可能性があります。ブロックチェーン対応デジタル通貨の購入および使用には、元本割れを含むリスクが伴います。本書で言及されている企業および/またはケーススタディは、説明の目的のみに使用されており、いかなる投資もフランクリン・テンプルトンが助言するポートフォリオによって現在保有されている場合も、そうでない場合もあります。提供される情報は、特定の証券、戦略、投資商品に対する推奨や個別の投資アドバイスではなく、フランクリン・テンプルトンの運用するポートフォリオの取引意図を示すものではありません。

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