RBAは景気下支えのため0.25%の利下げ決定
豪州準備銀行(RBA)は3月3日、政策金利を0.50%へ0.25%引き下げる決定を下しました(図1)。
RBAは声明文において、世界的な新型コロナウイルスの感染拡大への対応策として、景気下支えのため利下げを決定したと表明しました。
RBAは新型ウイルスの豪州景気への影響に懸念
今回の声明文でのRBAの景気判断では、新型ウイルスの問題が短期的な世界経済の見通しを曇らせていると指摘すると同時に、教育・観光産業を中心に豪州経済にも大きな影響を及ぼしつつあるとの見方が示されました。
また、新型ウイルスの世界的感染拡大は、足元では豪州の消費者心理の悪化を通じて個人消費への下押し圧力にもなりはじめている模様です(図2)。
RBAは追加の金融緩和の用意があると示唆
RBAは先行きの金融政策に関して、「景気支援のため追加の金融緩和の用意がある」との方針を示しています。直近の市場予想では、RBAの政策金利は2020年7-9月期にも0.25%へ引き下げられると見込まれています。
当面の焦点は1-3月期の豪州景気の動向
今後、RBAが追加利下げに踏み切るかどうかの焦点は、2020年1-3月期の豪州景気の行方に集まりそうです。
当初、1月時点の市場予想では豪州の実質GDP成長率は2020年から2021年にかけて緩やかな持ち直しが見込まれていました。しかし、直近の市場予想では、森林火災や新型ウイルスの影響から2020年1-3月期の実質GDPは前期比0.0%へ減速が予想されており、マイナス成長に転じる可能性への警戒が増しつつあります(図3)。
モリソン政権は追加の財政緩和策を実施見込み
豪州のモリソン首相はRBAとの連携を図りながら、財政政策の面でも追加の景気刺激策を導入する方針を示しています。具体的な政策は近く公表される見込みです。
豪州政府の当初の2019年12月時点の見通しでは、2019-2020年度(7月~6月)の基礎的財政収支が50億豪ドルの黒字に転換すると見込まれていました。しかし、豪州での森林火災や新型コロナウイルスの経済的な影響への懸念が増す中、足元では豪州政府は財政黒字化よりも景気対策を優先する姿勢に転じています。
協調金融緩和への期待から豪州株に反転の兆し
豪州株式市場では、新型コロナウイルスの世界的な感染への懸念が高まり、S&P/ASX200指数は史上最高値を付けた2月20日から3月2日にかけて10.8%の大幅な下落となりました(図4①)。
しかし、先週末以降、米国・日本・欧州などの中央銀行による協調的な金融緩和の観測が高まったことで、市場心理の悪化に歯止めがかかり、3月3日の豪州株式市場には反転の兆しがみられました(図4②)。本日のRBAによる利下げ決定とモリソン政権による追加の財政緩和策も、今後の市場心理を下支えすると期待されます。
配当利回りの面で豪州株の投資妙味高まる
また、RBAの利下げ決定を受けて、本日の豪10年国債利回りは過去最低水準を更新する0.79%へ一段と低下しました。新型ウイルスへの不透明感もあり、低金利環境が続く公算が高まる中、4%台へ上昇している豪州株の予想配当利回りとの格差が拡大しています(図4③)。
今後、主要国による協調金融緩和などをきっかけに市場の混乱が終息に向かう道筋が見えれば、豪州株への投資の好機が生まれる可能性もありそうです。
豪ドル相場はRBA利下げを好感する反応示す
為替市場では、通常であればRBAの利下げ決定は豪ドルの下落要因となるところ、本日はRBAの利下げが新型ウイルスによる景気減速懸念を緩和する要因となり、豪ドルの対米ドル相場は小幅の豪ドル高の反応となりました。
当面の豪ドル相場は、「新型ウイルスによる景気減速懸念」と「RBA・豪州政府による協調緩和策への期待」の綱引きの相場環境が続きそうです。
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