豪政府はコロナ問題に二段構えで対応する姿勢

豪州政府は懸念が増しつつある新型コロナウイルス問題に対して、①国内感染抑制のため厳格な出入国規制をかけるとともに、②発動余地が残されている財政政策によって機動的に景気減速圧力を緩和する、という二段構えの政策で対応する姿勢を示しています。

豪政府は厳格な新型ウイルス感染防止策を公表

まず、新型ウイルスの感染抑制策の面では、豪州政府は2月1日より中国からの外国人の入国を禁止する措置を継続してきました。そして、3月以降は、イラン、韓国、イタリアが新たに入国制限の対象国として追加されました。

選択的な入国制限策にもかかわらず、3月中旬以降、豪州での新型ウイルス感染者数は増加傾向に転じつつあります(図1)。豪州での感染者の絶対数は他国と比べれば小規模に留まっているものの、足元で豪州政府はすべての入国者への14日間の自主隔離義務や国民への海外旅行の禁止を含む厳格な感染防止策を公表しました。

モリソン政権は第二弾の財政刺激策を策定中

一方、財政政策の面では、豪州の連邦政府(モリソン政権)が3月12日に176.3億豪ドル(約1.2兆円*)規模の財政刺激策を公表したのに続いて、各州政府も独自の支援策を打ち出し始めています。連邦・州政府全体のコロナ対策の支出額は245億豪ドル(約1.7兆円*)と、豪州の年間GDPに対しては約1.2%相当の規模になります(図2)。

さらに、豪連邦政府は一段と高まる世界的な景気減速懸念への対応から、数十億豪ドル規模の第二弾の財政刺激策を策定中とみられています。連邦政府と州政府が一体となった財政刺激策は、2020年4-6月期から年後半に向けた豪州景気の回復を後押しすると期待されます。(*)レター中の換算レート:1豪ドル=70円

豪州準備銀行(RBA)は金融緩和策を推し進める

また、豪州準備銀行(RBA)は、コロナ・ショックに伴う金融市場の混乱と景気減速圧力を緩和するため、次の二つの面から政策対応を推し進めています。

第一に、モリソン政権の財政政策と強調した金融緩和策です。RBAは3月3日の理事会で0.25%の利下げを決定し、政策金利は史上最低の0.50%へ引き下げられました。

さらに、日米欧をはじめ世界中の中央銀行がコロナ・ショックに対応した緊急的な金融緩和策を進める中、RBAも早期の金融緩和を打ち出す公算が高まっています。RBAは3月19日に豪州経済を支援するための一段の政策を公表すると予告しており、主要国中銀に追随した追加利下げが実施される可能性がありそうです。

RBAは流動性不足解消のため資金供給を強化

第二に、豪州でも高まる流動性不足問題(あらゆる金融資産を売却して現金へシフトする需要の高まり)に対応するため、RBAは短期金融市場での公開市場操作による資金供給を強化しています。

3月13日にはRBAの公開市場操作による資金供給額が史上最高の88.4億豪ドル(約6,200億円*)へ拡大し、今週以降も高水準の資金供給が続いています(図3)。

また、豪州国債市場では、通常の株安局面では国債への資金逃避により金利低下圧力がかかりやすいものの、足元では株安の中で豪10年国債利回りが上昇する特異な現象が起きています(図4)。世界的な市場の混乱によって、海外ヘッジファンド勢が豪州国債の売りを余儀なくされていることが足元の金利上昇要因とみられています。

RBAは3月19日の政策公表の際、豪州国債利回りの歪みを是正し、金融市場を安定化させるため、豪州国債の買い入れ策に踏み込む可能性も高いとみられています。

今後はRBAの為替政策の行方にも注目集まる

為替市場では、豪ドル相場はリーマンショック後の最安値を下回る1豪ドル=0.60米ドルへ下落しました。

リーマンショック後に豪ドル相場が最安値を付けた2008年10月の局面では、RBAが米ドル売り・豪ドル買いの為替介入に踏み切ったことが豪ドル相場反転の契機となりました(図5)。今後、世界的な金融市場の混乱に伴って豪ドル相場が一段と下落する場合には、RBAによる「口先介入」を含めた為替政策の行方にも注目が集まりそうです。

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