RBAは豪3年債利回りの誘導目標の維持を決定
豪州準備銀行(RBA)は4月7日の定例会合で、政策金利(キャッシュレート)および豪3年国債利回りの誘導目標を0.25%で据え置くことを決定しました。また、RBAが3月19日の緊急会合で公表したその他の緩和策についても、継続する方針が示されました。
量的緩和策により安定を取り戻す豪州国債市場
RBAが3月19日に量的緩和策の導入を決定して以降、豪州の国債市場は安定を取り戻しつつあります。
豪州国債の年限別利回り(イールドカーブ)は、量的緩和の実施前には長期の年限にかけて金利上昇圧力が高まっていましたが、足元ではイールドカーブ全体で金利の落ち着きが顕著となっています。特にRBAが政策目標とする豪3年国債利回りは、4月6日時点で政策目標の0.25%へ低下しています(図1)。
RBAは4月6日まで累計で360億豪ドルの豪州国債(含む州政府債)の買い入れを実施してきました(図2)。もっとも、一日当たりの買い入れ額は3月20日の50億豪ドルから足元では20億豪ドルへ縮小傾向にあり、RBAは今回の会合の声明文でも、市場環境の改善が続けば国債買い入れの規模や頻度を低下させる可能性を示唆しました。
RBAの政策の焦点は中小企業向け貸出支援策に
また、RBAは豪州の短期金融市場に対しても公開市場操作による資金供給を強化してきましたが、金融システムへの流動性供給が十分に行き渡ったことから、短期的に今後の資金供給を縮小する方針を示唆しています(図3)。
当面のRBAの金融政策の焦点は、不安定化した短期金融市場への流動性供給から、景気下支えのための中小企業向けの貸出支援策にシフトすると考えられます。
早期の終息が視野に入る豪州のコロナ問題
豪州では金融市場の混乱の主因となってきた新型コロナウイルス問題にも解決の糸口が見え始めています。
4月6日時点で豪州全体での新型コロナウイルスの累積感染者数は5,800人に達しましたが、新規感染者数は3月28日のピーク(460人)から4月6日には107人まで縮小しています(図4)。豪州では新型コロナウイルス問題の早期の終息も視野に入りつつあると考えられます。
また、足元ではイタリアやスペインなどの欧州諸国だけでなく、米国でも新型コロナウイルスの感染拡大が最悪期を脱しつつあることも、豪州における市場心理の改善に寄与する要因となりそうです(次頁図7)。
豪州で新型コロナウイルスの感染抑制が進む背景
豪州で新型コロナウイルスの感染抑制が進んでいる背景として、二つの要因が挙げられます。
第一に、3月中旬以降、豪州政府が新型コロナウイルスの感染抑制のため厳しい入国制限や社会的隔離政策を進めてきたことが効果を生み始めたと考えられます。
第二に、豪州政府が新型コロナウイルスの検査体制を強化してきたことが挙げられます。豪州における人口100万人当たりの新型コロナウイルスの検査件数はすでに1万件を上回り、検査の普及率が総人口の1%強に達していることを示しています(図5)。
これは主要国の中ではドイツに匹敵する検査体制の充実度と言えますが、ドイツでは10万人を超える深刻な新型コロナウイルスの感染拡大が検査強化の一因となった一方、豪州では感染拡大予防のため早期の段階から検査を強化してきたことが奏功している可能性があります。
モリソン首相の政策対応に国民の評価高まる
新型コロナウイルスの感染抑制や景気支援のための豪州政府(モリソン政権)の政策対応に対して、豪州国民からの評価が急速に高まりつつあります。
最新の世論調査では、モリソン首相の支持率は政権発足来の最高水準に達しました(図6)。豪州で深刻化した森林火災への対応の遅れから一時は支持率が急低下したモリソン首相ですが、新型コロナウイルスの感染抑制や大規模な雇用対策の早期実行などの面で実績を挙げていることが支持率急上昇に繋がっていると考えられます。
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