1-3月期の実質GDPは9年ぶりのマイナス成長

豪州の2020年1-3月期の実質GDPは前期比-0.3%と、2011年1-3月期以来、9年ぶりのマイナス成長となりました(市場予想は前期比-0.4%、図1)。

豪州では政府によるコロナ対応の隔離規制の影響から、4-6月期の実質GDPは一段の落ち込みが予想されており、定義上の景気後退(2四半期連続の前期比マイナス成長、テクニカル・リセッション)は避けられないとみられています。

民間消費の大幅な調整が実質GDPを押し下げ

豪州の1-3月期の実質GDPがマイナス成長となった要因として、年初に深刻化した森林火災に加え、3月以降の新型コロナウイルスの国内感染の影響が挙げられます。

特に1-3月期の成長率を押し下げたのは、GDPの約6割弱を占める民間消費の大幅な調整でした(図2)。新型コロナウイルスの感染抑制のため、豪州でも各種経済活動を制限する規制が強化されたことで、1-3月期の実質民間消費は前期比1.1%の減少となりました。

また、その他のGDP構成項目に関しても、1-3月期は住宅投資(前期比-1.7%)や民間投資(前期比-0.4%)などの民間部門の経済活動の縮小がみられました。

主要国の中で豪州のGDPの落ち込みは最も軽微

もっとも、主要国の1-3月期の実質GDP成長率の結果を比較してみると、豪州の成長率の落ち込みが最も軽微であったことが分かります(図3)。

新型コロナウイルスの震源地とされる中国では1-3月期の実質GDPは前期比-9.8%の大幅な下落となりました。続いて感染が拡大した欧州主要国でも前期比2~5%のマイナス成長となったほか、米国(前期比-1.3%)や日本(前期比-0.9%)も豪州を上回るマイナス成長となりました。

消費者心理改善は今後の豪州景気にとって光明

豪州の1-3月期の実質GDPを主に押し下げたのが民間消費であったということは、今後の豪州景気の方向性を左右するのも民間消費であると言うことができます。

その意味では、すでに足元で豪州の消費者心理がコロナ危機前の水準まで順調に回復していることは、今後の豪州景気の先行きにとっての光明と考えられます。

豪州と米国の消費者心理の格差が拡大する傾向

特に足元では、豪州と米国の消費者心理の格差が鮮明に表れつつあります(図4)。豪州では消費者心理の早期の正常化が進んでいる一方、米国は消費者心理の悪化にようやく歯止めがかかり始めた段階にあります。

また、米国では、新型コロナウイルスの感染問題が終息していない中、全米各地でのデモ拡大という新たな問題が今後の消費者心理の重石となる可能性も浮上しています。

このように豪州と米国で消費者心理の回復ペースに差が生まれていること、改めて各国が新型コロナウイルスの感染封じ込めに成功するかどうか(=感染終息への国民の信認が生まれるか)が、今後の景気回復のカギを握る重要な要因であることを示唆しています。

豪ドル相場はコロナ危機前の水準まで急回復

足元の為替市場では、コロナ危機前の水準まで豪ドル相場の回復が急速に進みつつあります。豪ドルの対米ドル相場は節目の1豪ドル=0.7米ドルの水準に近付きつつあり、対円相場は1豪ドル=75円近辺へ回復しています(図5)。この背景として、次の2つの点が挙げられます。

第一に、コロナ危機の終息に向けた楽観論が世界の金融市場で台頭し、米ドルから資金を分散させる動きが活性化しつつある(=米ドル安が進行している)ことです。

第二に、米ドル安の裏側で豪ドルが買われる要因として、豪州経済のファンダメンタルズの優位性への評価がなされていると考えられます。豪州国内では、新型コロナウイルスの感染終息に向けた豪州政府の政策対応が奏功し、経済活動の本格的な再開が視野に入りつつあります。

一方、対外的にも、主要輸出資源である鉄鉱石価格が上昇傾向にある中、豪州の1-3月期の経常収支は過去最高の黒字額を更新しました(図6)。

アクセスランキング

※直近15日間で閲覧数の多いマーケット情報をランキングしています。

動画ライブラリー

マーケット情報やファンドの運用報告等を、動画でお届けしています。


サイトマップ
Top