2020年6月の豪州REITは弱含みの展開となる

2020年3月にコロナ危機を受けて急落した豪州REITは、豪州国内での早期の感染終息と経済活動の再開を追い風に、緩やかな回復基調が続いてきました。

しかし、6月に入ると世界的に新型コロナウイルスの感染第二波への懸念が台頭する中、豪州REITも弱含みの展開となりました。6月の豪州REITの月間騰落率は-2.6%と小幅の下落となりました(図1上)。

足元ではビクトリア州で局所的に新規感染が拡大

足元では、豪州でも新型コロナウイルスの感染が拡大する兆しがみられます。7月4日には豪州の新規感染者数は114人と、4月上旬以来の高水準となりました(図1下)。

もっとも、足元の豪州での感染拡大はビクトリア州の一部地域を中心にした局所的な現象に留まっており、NSW州やクイーンズランド州などその他の州では依然として感染者数は抑制傾向が続いています(4頁図8)。例えば、豪州の6月以降の累計新規感染者数(1,111人)のうち、ビクトリア州が931人(83.8%)と大半を占め、NSW州は147人(13.2%)、その他州は33人(3.0%)に留まっています。

ビクトリア州の都市封鎖再導入の規模は限定的

ビクトリア州政府は感染のホットスポットとされるメルボルン郊外地域において、7月1日深夜から4週間のロックダウン(都市封鎖)を再導入する決定を下しました。

ただし、ロックダウンの対象地域(7月5日時点で12地域)の人口は約35万人と推定され、メルボルン市人口の6.9%、ビクトリア州人口の5.3%に相当する限定的な規模となっています(図2)。今後、ビクトリア州によるホットスポット地域での隔離・検査強化策によって、感染再拡大が早期に抑え込められるかに市場の注目が集まりそうです。

本格的な経済活動再開に向けた方針に変化なし

足元での豪州でのロックダウン再導入はビクトリア州の一部地域に限定されており、NSW州やクイーンズランド州など他の州では7月に経済活動の本格的な再開に向けた規制解除の方針に概ね変化はないとみられています。 

大手ショッピングセンターの訪問客数は回復基調

豪州全体ではコロナ関連の規制解除が進む中、豪州REITの中でもコロナ危機の影響を大きく受けた商業施設REITの経営環境は徐々に正常化に向かいつつあります。

大手商業施設REITセンター・グループの公表資料によれば、①「6月30日時点で自社の豪州のショッピングセンターでは約92%の小売店舗が営業中」、②「7月には映画館やフードコートなどへの規制解除により一層の店舗の営業再開が見込まれる」、③「6月27-28日の週末の自社のショッピングセンターへの訪問客数は前年同期の86%の水準を回復した」とされており、足元の商業施設の運営はコロナ危機前の状況に戻る兆しがみられます。

豪州REITの20年上期配当は二極化の傾向

また、コロナ危機による不透明感を受けて、豪州REITの間では先行きの配当見通しを撤回する動きが広がってきましたが、足元ではようやく主要豪州REITの2020年上半期の配当動向が明らかとなりつつあります。

図3に挙げた主要豪州REIT11社の中では、①コロナ危機の中でもオフィスREITや複合REITを中心に5銘柄は前年比での増配を維持、②4銘柄は前年比で減配を決定、③商業施設REIT2銘柄は無配を表明となり、増配と減配・無配で二極化する傾向がみられます。

もっとも、2020年上期の無配を公表した商業施設REITについては、足元でのショッピングセンターの訪問客数回復や個人消費の持ち直しを考慮すれば、2020年下期以降の復配の可能性も残るとみられます。

また、2020年上半期の実績配当に基づいた主要豪州REITの配当利回りは中央値で5.04%という水準にあり、豪州REITの配当面での投資妙味の高さを示しています。

配当利回りの面で豪州REITには再評価の余地

さらに、豪州REITの12カ月先配当利回りは、7月3日時点で5.24%と豪10年国債利回り(0.90%)と比べて相対的な高水準が維持されています(図4)。豪州におけるコロナ危機が終息に向かう過程では、豪州REITのキャッシュフローや配当も正常化に向かうことが予想され、配当利回りの面での豪州REITの投資魅力が高まると期待されます。

また、今後の豪州準備銀行の金融政策は、事実上のゼロ金利政策が長期にわたって継続されると見込まれ、イールド・ハンティング(利回り追求)の面から豪州REITへの再評価が進む余地は残されていると考えられます。

豪州REITは解散価値を下回る割安な水準にある

一方、豪州REITの株価純資産倍率(PBR)は、コロナ危機直後の3月23日に0.64倍へ低下した後、足元では7月3日時点で0.92倍と依然としてREITの解散価値である1倍割れの割安な水準で推移しています(図5)。

今後はコロナ危機に伴う豪州REITの純資産価値の低下が懸念されますが、足元で一部の豪州REITが公表した2020年6月末時点の保有不動産の鑑定評価が今後の純資産価値の行方の目安となると考えられます(図6)。

主要豪州REIT6社の保有不動産の鑑定評価を見ると、ショッピングセンターなどの商業施設の評価は2019年末と比べて概ね10%前後の下落となりました。一方、オフィスの鑑定評価は2019年末比-1.5%~+0.4%とコロナ危機による影響は限定的に留まったほか、産業用不動産の評価は物流需要の高まりなどから上昇する結果となりました。

保守的な想定を基に商業施設の鑑定評価額の下落率約10%を現在の豪州REITのPBRに当てはめてみると、修正PBRは1.02倍と解散価値と等しい割安な水準にあることが示されます(図7)。保有不動産の資産価値の面でも、豪州REITには見直しの余地が残されていると言えそうです。

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