豪州政府は雇用回復に注力した予算案を公表

豪州政府は10月6日夜、2020-21年度(2020年7月~2021年6月)の予算案を公表しました。当初、予算案は5月に公表予定でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて約5ヵ月遅れの公表となりました。

フライデンバーグ財務相は予算スピーチの中で、「今回の予算案は雇用が全てである」、「雇用回復なくして景気回復も財政改善もない」と述べ、コロナ危機で失われた雇用を取り戻すことに注力する方針を示しました。

今年度の財政収支はGDP比11%の赤字の見通し

予算案の財政計画では、2020-21年度の基礎的財政収支は2,137億豪ドル(GDP比11.0%)の大幅な赤字となる見通しです(図1)。その後、財政状況は緩やかな改善に向かい、2023-24年度には赤字は669億豪ドル(GDP比3.0%)まで縮小することが予想されています。

景気支援策により豪州の実質GDPは急回復へ

予算案の経済見通しでは、大規模な景気支援策を背景に、豪州経済のV字回復が見込まれています(図2上段)。豪財務省によれば、コロナ危機を受けて2020年4-6月期に急減した豪州の実質GDPは、2021年後半にはコロナ前の水準を上回ることが予想されています。

豪州の実質GDP成長率は2020-21年度のマイナス成長(-1.5%)の後、2021-22年度には+4.75%へ急回復が見込まれています(図2下段)。

予算案公表から一夜明けた10月7日の豪州株式市場では、市場関係者の間でマーケット・フレンドリーな景気支援策への評価や景気の先行きへの楽観論が広がり、ASX200指数は前日比+1.2%の底堅い上昇となりました。

予算案の景気支援策は982億豪ドルの規模

今回の豪州政府の予算案に盛り込まれた景気支援策は、今後4年間で982億豪ドル(約7.4兆円*)、GDP比に換算すると5.0%の規模に相当します(図3)。

景気支援策は主に2020-21年度(376億豪ドル)から2021-22年度(417億豪ドル)にかけて実行される計画であり、コロナ危機からの豪州景気の回復を大きく後押しする要因になると見込まれます。

予算案に盛り込まれた景気支援策の三本柱

予算案の景気支援策の主な内訳は図4の通りです。

景気支援策の大きな柱は、①企業向けの設備投資および資金繰りの支援、②個人向け所得税減税と雇用支援、③連邦・州政府によるインフラ投資の拡大です。

豪州政府は、民間の企業活動や個人消費を各種減税策や補助金などを通じて支援しながら、公共インフラ整備などの分野では政府自らが投資を主導する方針です。

資産の即時償却により企業の設備投資を促す

今回の豪州政府の景気支援策の中で最大の予算規模を誇るのが企業向けの設備投資減税(267億豪ドル)です。

これは予算案が公表された10月6日午後7時30分から2022年6月30日までに導入・更新された資産について全額の即時減価償却を認める政策で、売上高が50億豪ドル以下の企業(豪州企業の99%)が対象となります。

与野党は所得税減税の前倒しに協力する姿勢

一方、個人向け減税策では、豪州政府はすでに2019年7月に法制化済みの中間層向け所得税減税を、当初計画(2022年7月1日より実施予定)から前倒しし、2020年7月1日から遡及して実施することを提案しました。

今後、所得税減税前倒し法案は議会で審議される必要がありますが、すでに野党・労働党が減税前倒しを支持する方針を示していることから、同法案は議会でスピード承認される可能性が高いと考えられます。

モリソン政権と労働党が所得税減税前倒しの早期実行に向けた協力関係にあることで、早ければ2020年10-12月期にも個人消費の押し上げに減税効果が寄与し始めることが期待されます。

(*)為替換算レート:1豪ドル=75円

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