豪州株は10月以降、底堅い上昇基調に転じる

豪州株式市場は2020年10月以降、底堅い上昇基調に転じています。主要株価指数のS&P/ASX200指数は10月15日には6,210.30ポイントへ上昇し、3月6日以来の高値水準をつけました。テクニカル面からも、豪州株はこれまで上値抵抗線となってきた200日移動平均線を上抜けし、トレンド転換の兆しがみられます(図1)。

足元での豪州株の堅調な上昇の背景には、次の3つの要因があると考えられます。

① 景気支援策は議会承認を経て早期実行へ

第一に、10月6日に豪州政府が公表した予算案に対する市場からの評価の高まりが挙げられます。予算案では、景気回復を後押しするため、4年間で982億豪ドル(GDP比5.0%)の大規模な景気支援策が盛り込まれました。

さらに、景気支援策の中核を占める個人・企業向けの減税策は、予算案公表翌日の10月7日から議会審議が開始され、10月9日には法案がスピード承認されました。このように、議会での与野党の協調姿勢により景気支援策の早期の実行が可能となっていることも、市場からの予算案への評価に繋がっている面もあると考えられます。

② 予算案を受けて消費者心理が大幅に改善

第二に、豪州政府の予算案を受け、豪州の消費者心理が大幅に改善していることが挙げられます。

ウエストパック銀行が公表した2020年10月の消費者信頼感指数は、2018年7月以来の高水準となる105.0へ急上昇しました(図2)。予算案で打ち出された所得税減税の前倒しなどを背景に、消費者が豪州景気の先行きへの楽観的な見方を強めていることを示唆しています。

③ 豪州準備銀行は追加緩和策の検討を示唆

第三に、予算案において豪州政府が財政政策での景気支援策を打ち出したことに呼応し、豪州準備銀行(RBA)が追加金融緩和策に傾いていることが挙げられます。

フィリップ・ロウ総裁は10月15日の講演の中で、金融機関向けの資金供給の拡充や長期国債買い入れなどの追加緩和策を検討していることを示唆しました(図3)。

次回11月3日のRBA理事会では、政策金利の引き下げ(0.25%→0.10%)の有無に加えて、RBAが景気支援のための量的緩和策の拡大に踏み切るかが市場の注目材料となりそうです。今回のロウ総裁の発言を受けて、すでに市場では長期国債に対象を拡大した国債買い入れ策の増額などの観測が浮上しています。

低金利により豪州株の配当利回りの魅力増す

仮にRBAが追加量的緩和策として長期国債の買い入れ拡充に踏み切れば、豪10年国債利回りには一段の低下圧力がかかると考えられます。豪10年国債利回りの低下により、改めて豪州株の配当利回りへの投資家の注目が増す可能性があります。

10月15日時点で豪州株の予想配当利回りは3.18%と、豪10年国債利回り(0.77%)を依然として上回る水準にあります。特に豪州株の中でも、豪州インフラ株や豪州REITなどは相対的に高い予想配当利回りが維持されており、金利低下によりイールド・ハンティングへの投資家の関心が高まることで再評価される余地がありそうです(図4)。

割高感が限定的な豪州株には見直しの余地残る

また、足元の豪州株のバリュエーションは、米国のハイテク株などと比べて割高感は限定的に留まっています。

豪州株の12ヵ月先予想PERは19.61倍と、米国のS&P500指数(22.06倍)やNASDAQ総合指数(32.90倍)より相対的に割安な水準にあります(図5)。

今後、予算案の景気支援策やRBAの追加金融緩和策などの政策対応や豪州国内での新型コロナウイルスの終息などを背景に、豪州景気の本格的な回復が進行すれば、安定した経済ファンダメンタルズに支えられた豪州株への見直しの機運が高まることが期待されます。

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