米選挙懸念の後退とワクチン期待が株高を主導

2020年10月6日の豪州政府の予算案公表をきっかけに上昇に転じた豪州株は、11月以降、一段と上昇基調が強まる傾向にあります。主要株価指数のS&P/ASX200指数は11月10日には4営業日連続で上昇し、約8ヶ月ぶりの高値水準となりました(図1上段)。

足元の豪州株上昇の背景には、米大統領選挙において民主党バイデン候補の勝利と共和党主導の上院議会の公算が高まり、バイデン政権の経済政策(増税・規制強化)に対する懸念が後退したことが挙げられます。

加えて、11月9日には米製薬大手ファイザーが「新型コロナウイルスのワクチンの治験において9割で有効性が確認できた」と公表したことで、ワクチン期待の高まりが世界的な一段の株高を主導しました。

ワクチン期待は景気敏感株の見直し買い要因

ワクチン期待を受けた11月10日の豪州株式市場では、出遅れてきたエネルギー、金融、資本財・サービス(高速道路、鉄道等)、不動産(REIT等)などのセクターが買い戻された一方、コロナ禍で上昇が顕著だった情報技術や生活必需品などのセクターが大きく調整しました(図1下段)。

こうした11月10日の豪州株の値動きは、今後、本格的なワクチン相場が到来した場合、景気敏感株(バリュー株)に対する見直し買いが起きる可能性を示唆しています。

豪州政府は1.3億回分のワクチン供給を確保

なお、豪州のモリソン政権は、すでに国内外の4機関より合計1億3,480万回分のワクチン供給を受ける合意を結んでいます(図2)。一人当たり2回のワクチン接種を行うと仮定した場合、延べ約6,700万人分(人口の2.6倍に相当)の手厚いワクチン供給源を確保していることになります。

ワクチン普及までは感染抑制策が引き続き重要

もっとも、新型コロナウイルスのワクチンの普及には、当局の承認や生産・輸送・接種体制の整備など依然多くの課題が残されています。ワクチンの本格的な普及が進むまでの数カ月間は、新型コロナウイルスの感染抑制策の重要性が引き続き高いと言えそうです。

その意味では、足元で感染者数が急増する欧米とは対照的に、豪州は新型コロナウィルスの感染抑制の面で優位な立場にあると考えられます(次頁図6・7)。

豪州における感染第二波が拡大したビクトリア州では、早期のロックダウン(都市封鎖)が実施されたことで、足元ではレストランや小売店の営業再開が解禁され、経済活動も正常化に向かいつつあります(図3)。

豪州の消費者心理はコロナ前の水準まで回復

こうした経済活動の再開や政府予算案で示された景気支援策(所得税減税等)の効果から、豪州では消費者心理の改善傾向が足元で顕著となっています。

11月8日時点の豪州の消費者信頼感指数は103.1と、新型コロナウイルスの感染が拡大する前の3月上旬以来の水準へ回復しました(図4)。とりわけ、足元では消費者の間で主要消費財の購買意欲が増し始めており、今後の年末商戦での個人消費の回復が10-12月期の豪州景気の押し上げ要因になると期待されます。

RBAは個人消費主導の豪州景気の回復を見込む

実際、豪州準備銀行が11月6日に公表した「四半期金融政策報告」における経済見通しでは、2021年央にかけて豪州景気の回復が一段と進むとの予測がされています。

今回、RBAは2021年4-6月期の豪州の実質GDP成長率の予想を前年比+6%へ上方修正しました(8月時点の予想は前年比+4%)。とりわけ、RBAでは2021年に向けて個人消費が豪州景気の回復を主導すると見込んでおり、2021年4-6月期の個人消費は前年比+13%と二桁の伸びが予想されています(図5)。

感染終息と内需回復は豪州株の見直し要因に

こうした豪州における新型コロナウイルスの感染終息と今後見込まれるの内需主導の景気回復は、年末から2021年に向けた豪州株の見直し要因になると期待されます。

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