国内外の環境改善から豪州株の底堅さが際立つ

足元で豪州株の底堅い上昇が際立ち始めています。

10月1日を起点とすると、豪州株(S&P/ASX200指数)は+13.1%と二桁の上昇となり、米国のS&P500指数(+7.5%)やナスダック総合指数(+6.3%)、ドイツのDAX指数(+4.4%)などを軒並み上回っています(図1)。

足元の豪州株の上昇を支える背景として、外部環境と内部環境の改善が見えつつあることが挙げられます。

市場の焦点は米大統領選から政権移行にシフト

まず、外部環境の面では、11月3日に投票が行われた米大統領選挙が市場の大きな注目イベントとなりました。

大統領選挙の結果は、民主党のバイデン候補の勝利が確定的となり、選挙に関わる不透明感が概ね解消されたことが株式市場にとって好材料となりました。

11月23日には米政府機関の一般調達局(GSA)がバイデン候補への政権移行手続きの開始を表明したほか、次期財務長官にイエレン前FRB議長が指名される見通しとの報道がなされたことで、市場の焦点は選挙結果からバイデン政権への移行にシフトし始めています(図2)。

ワクチン開発の進展により景気回復期待が高まる

もうひとつ外部環境の面で株価の押し上げ要因となったのは、11月中旬以降、新型コロナウイルスのワクチン開発に進展がみられたことが挙げられます。

足元では、米ファイザーや米モデルナ、英アストラゼネカなどの医薬品各社が開発中のワクチンの高い有効性を示す治験結果を公表したことで、先行きの新型コロナ問題の終息と世界景気回復に対する期待が高まりつつあります。

豪州は新型コロナウイルスの感染抑制に成功

内部環境の面で豪州株上昇を支えた要因として、まず豪州国内における新型コロナウイルスの感染抑制の成功が挙げられます。足元では欧米において新型コロナウイルスの感染再拡大への懸念が高まる中、豪州の新規感染者数は抑制傾向が維持されています(図3)。

新型コロナウイルスのワクチンが世界中に行き渡るまでには今後数ヵ月は要するとみられ、それまでの間は感染抑制策の重要性が引き続き高いと考えられます。

感染終息から豪州の経済活動は正常化に向かう

豪州国内での感染終息により、足元では豪州の個人や企業の経済活動にも正常化の兆しがみられます。

例えば、豪州における小売店・娯楽施設への客足は、足元でコロナ前の約9割まで回復しています(図4)。感染第二波によりロックダウン(都市封鎖)を導入したビクトリア州でも、足元の規制解除により小売店・娯楽施設への客足はコロナ前の約8割の水準を取り戻しました。

また、3月~5月のコロナ危機により急失速した豪州の企業活動にも、足元では底堅さが戻りつつあります。豪州の11月の景気指数(PMI)は、製造業が56.1、サービス業が54.9といずれも企業活動の拡大・縮小の分岐点である50を上回る好調な結果となりました(図5)。

豪州は2020年7-9月期には景気後退を脱出へ

コロナ危機により2020年は1-3月期(前期比-0.3%)と4-6月期(同-7.0%)に二期連続のマイナス成長となった豪州経済ですが、7-9月期にはプラス成長に転じて景気後退を脱出する公算が高まっています。

最新の市場予想では豪州の実質GDP予想が上方修正され、2020年7-9月期は前期比+1.9%のプラス成長が見込まれています。実質GDPの前年比では、2021年4-6月期には+5.8%へ回復が進む見通しです(図6)。

ワクチン相場の中、バリュー株への見直し広がる

足元のワクチン相場の中、先行きの景気回復期待の高まりからバリュー株への見直しの動きが広がっています。

米大統領選挙前の11月2日を起点として米国のグロース株とバリュー株のパフォーマンスを比較すると、大統領選挙直後こそグロース株が大きく上昇したものの、ワクチン期待が浮上した11月中旬以降はバリュー株優位の相場展開が続いています(図7)。

ハイテク株の比重が相対的に低い豪州株はバリュー株(景気敏感株)としての特性を備えており、今後、本格的なワクチン相場が到来し、景気回復期待が高まれば、豪州株にも一段の追い風要因になると考えられます。

豪州株には配当利回りの面で投資妙味残る

豪州株には配当利回りの投資妙味も残されています。

11月24日時点で豪州株の予想配当利回りは3.08%と、豪10年国債利回り(0.89%)を依然として上回る水準にあります。特に豪州株の中でも、豪州銀行株や豪州REITなどは相対的に高い予想配当利回りが維持されています。

低金利の長期化により豪州株に再評価の余地

豪州準備銀行(RBA)は当面の金融政策において雇用回復への支援を重視し、少なくとも今後3年間は利上げを行わない方針を示しています。また、11月3日のRBA理事会では、中長期国債を対象にした新たな国債買い入れ策が決定されました。現行の低金利環境が長期化する公算が高まる中、イールド・ハンティング(利回り追求)の面から豪州株には再評価の余地がありそうです(図8)。 

来年以降、豪州企業の配当回復が見込まれる

また、2021年以降は豪州景気の回復に伴って、豪州企業の収益や配当の回復も期待されます。

ファクトセット集計の市場コンセンサス予想では、豪州の主要企業の一株当たり利益は2021年に前年比+16.1%の増益へ転じる見通しとなっています。一株当たり配当に関しても、2021年に+15.9%、2022年に+8.2%と増配基調が予想されています(図9)。

今後、年末から2021年前半にかけて豪州景気の回復の底堅さが増せば、豪州企業の増配に対する投資家の信頼回復が広がる可能性もありそうです。

豪ドル相場はコロナ危機後に底堅い回復を示す

豪ドル相場はコロナ危機の後、豪州株よりも先行して底堅い回復が進んできました。足元の豪ドルの対米ドル相場は1豪ドル=0.73米ドル近辺とすでにコロナ前の水準を上回っています(図10)。また、豪ドルの対円相場も1豪ドル=76円近辺の堅調な推移が続いています。

コロナ危機後の豪ドル相場の回復を支えてきたのは、①鉄鉱石価格の上昇などによる豪州の貿易黒字や、②コロナ危機一巡による世界の金融市場の正常化(危機の米ドル買いの巻き戻し=米ドル安進行)、などの要因でした。

RBAは豪ドル高圧力緩和を目指すも実現は困難

RBAは11月3日の理事会において、豪ドル高圧力の緩和や景気回復の支援のため、総額1,000億豪ドル(GDP比5%相当)の中長期国債の買い入れ策を公表しました。

もっとも、豪州と米国の10年国債利回りはいずれも1%未満の低水準にある上、欧米でも量的緩和の拡大が見込まれることから、RBAの政策だけで豪ドル相場の方向性を変えることは困難とみられます(図11)。

バイデン政権下の米ドル安シナリオが市場の潮流

むしろ、足元の為替市場の潮流は、バイデン政権下での米ドル安進行シナリオに焦点が移りつつあります。

今後、財務長官にイエレン前FRB議長が起用され、米国の財政・金融政策の面で景気支援を重視したハト派姿勢が強まれば、一段と米ドル安が進む可能性があります。

同時に、2021年には新型コロナウイルスのワクチンの段階的な普及に伴って、投資家のリスク選好度が改善することが想定され、米ドル安の裏側で経済ファンダメンタルズが安定している豪ドルへの注目が高まりそうです。

2021年に向けた豪ドル高予想の見方が大勢

実際、豪ドル相場の市場コンセンサスでは、2021年に向けて一段の豪ドル高を予想する見方が大勢です。

直近の市場コンセンサスでは、2021年末の豪ドルの対米ドル相場の予想中央値は0.76米ドル、対円相場の予想中央値は81.3円と、いずれも緩やかな豪ドル高基調が見込まれています(図12)。

2021年に向けては、バイデン政権下での米ドル安(円高)リスクのヘッジとして「豪ドル資産の保有の意義」が高まる可能性もあると考えられます。

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