RBAは政策金利と量的緩和策の維持を決定

豪州準備銀行(RBA)は12月1日の理事会において、政策金利と豪3年国債利回りの誘導目標を0.10%で据え置く決定を下しました(図1)。また、量的緩和策であるターム・ファンディング・ファシリティ(金融機関向け資金供給策)および総額1,000億豪ドル規模の中長期国債の買い入れプログラムについても現行の政策を維持しました。

また、先行きの金融政策に関して、RBAは少なくとも今後3年間は政策金利の引き上げを見込んでいないと改めて表明し、低金利政策を維持する方針を示しました。

緩和策の効果から豪州の住宅市場の回復が顕著

RBAの金融緩和策や豪州政府の財政支援策を背景に、足元では豪州の住宅市場の回復が顕著となっています。

豪州主要都市の11月の住宅価格は前月比+0.7%と2ヵ月連続での上昇となりました(図2上段)。豪州国内で新型コロナウイルスの感染終息が進み、多くの州でロックダウン(都市封鎖)規制が緩和されたことで、個人の住宅購入意欲が高まりつつある模様です。

また、10月の住宅建設許可件数も16,584件と2年ぶりの高水準となるなど、コロナ禍で一時は停滞した住宅建設活動も活性化の兆しがみられます(図2下段)。

豪政府は住宅建設支援策を来年3月まで延長へ

豪州政府はコロナ禍での住宅建設を支援するため、1件当たり2万5000豪ドル(約188万円*)の補助金を支給する「ホームビルダー・プログラム」を実施してきました。

同政策は当初は年末で終了予定であったものの、豪州政府は補助金を1万5,000豪ドル(約113万円*)に減額しながら、2021年3月末まで延長する方針を示しています。

(*)為替換算レート:1豪ドル=75円

豪ドルは対米ドルで年初来高値圏へ上昇

2020年11月の豪ドル相場は、対米ドル・対円ともに強含みの傾向となりました(図3)。米大統領選挙に関わる不透明感後退やワクチン期待の高まりを背景に投資家心理が改善し、足元の豪ドルの対米ドル相場は年初来高値圏へ上昇しています。また、豪ドルの対円相場も1豪ドル=76円近辺で底堅い推移が続いています。

中国との関係悪化でも鉄鉱石価格は上昇基調

足元では、中国政府による豪州産の石炭やワインなどに対する輸入規制が強まるなど、豪州と中国の貿易摩擦問題が悪化する兆候がみられるものの、市場への影響は現時点では限定的に留まっています。

むしろ、豪州の主要輸出産品である鉄鉱石の価格は、好調な中国の経済活動を反映して1トン当たり130米ドル台の高水準に上昇し、豪ドル相場を押し上げる一因となっています(図4)。今後は米国でのバイデン政権の発足を受けて、多国間交渉によって中国との外交関係の改善が図られるかに注目が集まりそうです。

7-9月期の経常収支は市場予想上回る黒字

高水準の資源価格などを背景に、豪州では経常黒字基調が続いています。豪州の2020年7-9月期の経常収支は+100億豪ドルと市場予想(+71億豪ドル)を上回る黒字となり、これにより経常黒字は6四半期連続となりました。

安定した経常黒字がコロナ禍での豪ドル相場を実需面から下支えしてきたと考えられます。

海外投資家の対豪証券投資は流入超に転じる

一方、海外投資家の豪州への証券投資は、コロナ危機が深刻化した2020年上半期には資金流出となったものの、7-9月期には+545億豪ドル(約4兆円*)の大幅な資金流入に転じました(図5)。

豪州政府がコロナ対応のため国債を増発する中、海外投資家が豪州国債の積極的取得に動いたことで、債券投資の流入が+480億豪ドル(約3.6兆円*)へ拡大しました。また、海外投資家の豪州株への投資も+65億豪ドル(約4,900億豪ドル*)と7四半期連続の資金流入となりました。

海外投資家による豪州への信認の回復が高値圏にある豪ドル相場を支える要因になっていると言えそうです。

(*)為替換算レート:1豪ドル=75円

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