年初の豪州REITは金利上昇により軟調地合い

2021年の豪州REITは軟調な滑り出しとなりました。豪州REIT(S&P/ASX300REIT指数)の1月27日時点の年初来パフォーマンスは-3.0%と小幅の下落となっています。

足元の豪州REITの調整の主な要因としては、米バイデン政権誕生への思惑から世界的に長期金利が上昇したことが挙げられます。米国の金利上昇に連動し、豪州の10年国債利回りは1月12日には1.15%まで上昇しました。

もっとも、昨年来の豪州REITの値動きを見ると、コロナ危機からの回復基調は大きく崩れてはいません。グローバルREITと比較すると、2020年9月以降は豪州REITがアウトパフォームする傾向がなお続いています(図1)。

豪州REITの回復支える豪州でのコロナ感染終息

2020年9月以降の豪州REITの底堅い回復を支えた背景として、豪州が新型コロナウイルスの早期の感染終息に成功しつつあることが挙げられます。

2020年10月以降の欧米での感染拡大とは対照的に、豪州では新規感染者数の抑制が定着化し、すでに経済活動再開との両立も進み始めています(3頁図6)。

豪州では小売店・娯楽施設の客足が早期に回復

国内での感染終息に伴って、豪州REITにとって重要なショッピングセンターなどの小売店・娯楽施設への客足も欧米諸国と比べても早期の回復が進んでいます。

グーグルが集計した豪州における小売店・娯楽施設の客足の動向は、2020年末のクリスマス直前にかけてコロナ前を上回る堅調な回復が示されました(図2)。一方、欧米諸国では、感染抑制のためのロックダウンの影響などから、小売店・娯楽施設の客足の低迷が続いています。

豪州景気は消費主導の底堅い回復が見込まれる

豪州では新型コロナの感染終息が進み、経済活動の再開が広がる中、消費者心理の改善も顕著となっています。

豪州の消費者信頼感指数は足元でコロナ前の水準を上回るなど、消費者の楽観姿勢が強まりつつあります(図3)。さらに、2021年には新型コロナウイルス・ワクチンの本格的な普及が後押しする要因となり、豪州景気は個人消費主導の底堅い回復が予想されます(3頁図7)。

今後、新型コロナウイルスの感染抑制とワクチン接種による予防体制が整備されれば、豪州国内の経済活動の正常化が豪州REITにも追い風になることが期待されます。

住宅市場の活性化は豪州REITにも恩恵及ぼす

また、消費者心理の回復は個人による住宅取得意欲の改善を通じて、住宅価格の上昇にも寄与し始めています。

豪州の主要5都市平均の住宅価格は2020年10月を底に上昇に転じ、足元ではコロナ前のピークの水準も視野に入りつつあります(図4)。都市別では、2020年後半に新型コロナの感染第二波が広がったメルボルン(ビクトリア州)やシドニー(NSW州)では住宅価格の回復は依然として緩やかな一方、早期に感染終息が定着化したアデレード(南オーストラリア州)やブリスベン(クイーンズランド州)ではすでにコロナ前を大きく上回る住宅価格の上昇が顕著です。

こうした住宅市場の活性化は、二つの面から豪州REITにも恩恵を及ぼすと考えられます。第一に、住宅販売の回復は住宅開発を行う複合系REITにとっての業績の追い風要因となります。実際、2020年12月の新規住宅販売件数は政府の住宅建設支援策の効果もあり、過去20年間で2番目に高い水準を記録しました。

第二に、住宅セクターを契機に不動産市場全体に取引活性化が広がれば、保有資産価格の上昇の面で豪州REITへの見直し機運が高まる可能性があります。

豪州REITの株価には割安感が残されている

豪州REITの株価にはバリュエーションの面でも割安感が残されています。1月27日時点の豪州REITの予想配当利回りは4.50%と、豪州株の予想配利回り(3.28%)や豪10年国債利回り(1.09%)を上回る水準にあります(図5)。

相対的に高いインカム収益が期待される投資対象としても、豪州REITには見直しの余地が大きそうです。

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