RBAは国債買い入れを柔軟に調節する方針示す
豪州準備銀行(RBA)は3月2日の定例理事会で、大方の市場予想通り、政策金利と豪3年国債利回りの誘導目標を0.1%で据え置く決定を下しました(図1)。
今回のRBA理事会では、足元の中長期国債利回りの急上昇に対するRBAの政策対応に市場の注目が集まりました。先週2月26日には豪10年国債利回りは1.92%へ、豪5年国債利回りは1.00%まで上昇が進んだことから、RBAは3月1日に1日当たりの国債買い入れ額の増額(20億豪ドル→40億豪ドル)を実施したばかりでした。
今回、RBAは声明文で「市場環境に応じて一段の国債買い入れの調節を行う用意がある」と述べ、現行の量的緩和策の枠組みの中で柔軟に対応する方針を示しました。
RBAは2024年まで利上げを行わない方針示す
先行きの金融政策に関しては、RBAは「実際のインフレ率が持続的にインフレ目標内(2~3%)で推移するまでは政策金利の引き上げは行わない」、「2024年までに利上げの条件が満たされるとは予想していない」と述べ、長期間にわたり低金利政策を維持する方針を示しています。
豪ドル高への口先介入によるけん制を行わず
また、足元では豪ドル相場の上昇が顕著となっています。豪ドルの対米ドル相場は2月下旬に一時1豪ドル=0.8米ドル近辺まで上昇したほか、対円相場も足元は1豪ドル=83円近辺の高水準で推移しています(図2)。
RBAは豪ドル相場に関して「豪ドルは近年のレンジの上限にある」との言及に留め、豪ドル高に対する口先介入によるけん制は行いませんでした。次頁では、足元での豪ドル高基調を支える3つの要因について解説を行います。
豪ドル高要因①:豪・米間の金利差拡大
第一に、豪・米間の金利差拡大の要因が挙げられます。
2020年末以降、米国の10年国債利回りがワクチン期待や米国の財政刺激策を巡る観測を背景に上昇する中、足元では米金利以上に豪10年国債利回りの上昇が顕著となっています。2021年2月末には豪・米間の10年国債利回り差は0.51%まで拡大しました(図3)。
もっとも、3月1日にRBAが国債利回り抑制のため国債買い入れ額を倍増させた影響などから、足元では金利差拡大に一定の歯止めがかかる状況となっています。
豪ドル高要因②:資源通貨としての豪ドルの特性
第二に、米ドル安の裏側で資源通貨としての豪ドルの特性が選好されやすくなっている点が挙げられます。
豪州の主要資源である鉄鉱石の輸出価格は、2月初旬には1トン当たり150米ドルまで下落したものの、足元では再び170米ドル台の高水準を取り戻しています(次頁図6)。
また、足元の世界の金融市場では先行きのインフレ懸念が台頭し始めていることから、インフレ・リスクをヘッジする手段としてコモディティ関連資産に対する投資家の注目が増している面もあると考えられます。実際、2020年のコロナ危機以降は豪資源株と豪ドル相場の連動性が増していることからも、足元では資源通貨としての豪ドルの特性が強まりつつあることを示唆しています(図4)。
豪ドル高要因③:豪州の経常黒字の定着化
第三に、こうした資源価格の上昇の結果として、豪州の経常黒字が定着化していることが挙げられます。
豪州の2020年10-12月期の経常収支は資源輸出などにけん引され、+145億豪ドルと7四半期連続での黒字となりました(図5)。豪州がコロナ禍にあっても高水準の経常黒字を維持していることが、実需取引の面で豪ドル相場を押し上げる要因になっていると考えられます。
とりわけ、次頁図7において豪州と米国の経常収支の推移を比較してみると、「経常黒字化に転じた豪州」と「経常赤字が拡大する米国」が対照的となっています。経常収支の実需取引の面だけでも、米ドル安の裏側で豪ドル高が進みやすい素地ができていることが分かります。
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