ブラジルでも深刻化しつつある新型コロナ問題
世界的に新型コロナウイルスの感染が広がる中、ブラジルでも4月1日時点の累積感染者数が6,836人に達するなどコロナ問題は深刻化しつつあります(図1)。
主要国でのこれまでの感染拡大の推移と比較すると、現在のブラジルはイタリアのように感染者が爆発的に増加する軌道を辿るのか、韓国のように感染が比較的早期に終息に向かうのかの分岐点にあると考えられます。
政府は国境封鎖や経済活動の制限策を打ち出す
新型ウイルスの感染拡大を抑制するため、3月下旬以降、ブラジル政府や各州政府は国境封鎖や経済活動の制限策を相次いで打ち出しています。
ブラジル政府は空路での外国人の入国を3月30日から30日間にわたって禁止することを決定したほか、サンパウロ州では3月24日~4月7日の期間、生活に必要不可欠な商業・サービス以外のすべての施設の強制閉鎖が実施されています(ショッピングモールは4月30日まで閉鎖)。
また、サンパウロとリオデジャネイロを結ぶ航空機およびバスの輸送サービスも3月21日から一時運休され、コロナ問題は国内交通網にも大きな悪影響を及ぼしています。
20年の実質GDPはマイナス成長となる公算高まる
ブラジル政府の感染抑制策のため国内経済活動が事実上の休止状態にあることで、2020年のブラジル景気見通しが急速に悪化し始めています。
3月27日時点の市場予想では、ブラジルの実質GDP成長率は2020年4-6月期には一時的に前年比1.8%のマイナス成長に転じると見込まれています(図2)。
2020年通年の実質GDP成長率の市場予想では、2月28日時点の+2.17%から3月27日時点では0.48%のマイナス成長へ見通しが下方修正されました(図2下段表)。
非常事態宣言により機動的な財政運営が可能に
新型コロナウイルス問題の深刻化を受けて、ブラジル政府は3月20日、議会承認を経て非常事態宣言を発令しました。同宣言によって、財政責任法が定める財政目標の順守義務が一時的に停止され、ブラジル政府は一定程度の機動的な財政運営が可能となるとみられています。
ゲデス経済相は7,500億レアルの支援策を表明
ブラジル政府が計画する新型コロナウイルス対策の支援策は、すでに総額3,876億レアル(GDP比5.3%、約7.8兆円)という規模にあります(図3)。これには、経済弱者対策や雇用維持対策、医療支援策、州・地方政府への財政支援などの幅広い政策が含まれます(図6)。
加えて、ボルソナロ政権のパウロ・ゲデス経済相は3月26日の発言の中で、政府の景気支援策は中銀・公的銀行による資金支援策も含めると総額7,500億レアル(GDP比10%、約15兆円)に達するとの見通しを示しました。
ブラジル中銀は大規模な流動性支援策を公表
一方、ブラジル中銀は3月18日の金融政策委員会(COPOM)で0.5%の利下げを決定し、政策金利は史上最低の3.75%へ低下しました(図4上段)。現在の市場予想では、年内の追加利下げは0.25%程度と見込まれ、一段の利下げ余地は限定的との見方が大勢です。
もっとも、ブラジル中銀には利下げ以外にも金融緩和を進める政策余力が多く残されています。一例が預金準備率の引き下げです。ブラジル中銀は2020年3月に定期預金に係る預金準備率を31%から17%へ引き下げ、金融機関の貸出を支援する緩和策を実施しました(図4下段)。
コロナ危機への対応としてブラジル中銀が公表した流動性供給策(預金準備率引き下げを含む)は、2008年金融危機時の約10倍超の1.2兆レアル(GDP比16.7%)の規模にあります(図5)。金融機関への資本規制の緩和策も含めると、ブラジル中銀は総額2.4兆レアル(GDP比32.5%)の積極的な金融支援を行う方針を示しています。
財政・金融政策により景気底割れは回避されるか
当面のブラジル政府の政策の焦点は、厳格な経済封鎖措置によってウイルス感染の終息を目指しながら、機動的な財政・金融政策によってブラジル景気の大幅な底割れを回避できるかに集まりそうです。
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