ブラジル中銀は政策金利の据え置きを決定
ブラジル中銀は12月9日の金融政策委員会(COPOM)において、政策金利を2.00%で据え置く決定を下しました(図1)。金利据え置きは3会合連続となりました。
COPOMの声明文では、11月の拡大消費者物価指数が食品価格等の高騰により前年比+4.3%へ上昇したことに対して、「現在の(物価上昇)ショックは一時的との判断を維持しているものの、今後はコア・インフレの動向などを継続して注視する」と物価への警戒姿勢が示されました。
金融緩和縮小に向けた地ならしを始めた中銀
また、今回の声明文では、2020年8月のCOPOMで表明されたフォワード・ガイダンス(特定の条件が満たされる限りブラジル中銀は金融緩和を縮小する意図はないとの方針)を解除する可能性に言及がなされました。
インフレ期待の高まりやコロナからの経済正常化が進む兆しが見える中、ブラジル中銀は危機対応の大幅な金融緩和を修正する地ならしを始めたと考えられます。
市場予想ではブラジル中銀の政策金利は2021年前半は据え置きが継続された後、2021年後半に緩やかな利上げへの転換が見込まれています。
個人消費中心にブラジル経済は底堅い回復示す
足元のブラジル経済は、個人消費を中心にコロナ危機からの底堅い立ち上がりを示しつつあります。
ブラジルの小売売上高はコロナ禍の2020年4月に大幅な落ち込みに直面したものの、9月時点ではすでにコロナ前を大きく上回る売上高の水準を回復しています(図2)。
足元ではブラジルでも新型コロナウイルスの感染第二波が広がりつつあり、今後は感染抑制と経済活動の維持の両立が図られるかが焦点となりそうです(3頁図6・7)。
11月以降、ブラジル株とレアル相場の回復進む
2020年のブラジル金融市場では、3月のコロナ危機の深刻化を受けてブラジル株やレアル相場が大幅な調整を余儀なくされたものの、11月以降は外部環境の改善によって市場の回復が進みつつあります(図3)。
主要株価指数のボベスパ指数は足元で11万ポイント台を回復し、概ねコロナ前の水準を取り戻しています。ブラジル・レアルの対米ドル相場も、5月13日に付けた年初来安値(1米ドル=5.89レアル)から足元では5.1レアル近辺へ回復が進んでいます。
米選挙不安後退とワクチン期待が株価押し上げ
2020年11月以降のブラジル株およびレアル相場の回復の主因となったのは、米大統領選挙の不透明感後退とワクチン期待の高まりでした(図4)。
11月3日に投票が行われた米国の大統領選挙では民主党バイデン候補の勝利が確定的となり、イベント通過による投資家の不安解消が進んだことや、11月中旬以降、欧米製薬会社が開発中の新型コロナウイルス・ワクチンに関する高い有効性を公表したことで、ワクチンを主導にした2021年の景気回復期待が台頭しました。
11月に海外投資家のブラジル株投資が急回復
実際、11月には海外投資家のブラジル株への投資フローが333億レアル(約6,700億円*)の大幅な資金流入に転じるなど、外部環境の改善が海外投資家のブラジルへの投資意欲の回復に寄与する兆しもみられます(図5)。
(*)為替換算レート:1レアル=20円
2021年はブラジルの経済改革の推進が焦点に
2021年にはワクチンの本格供給をきっかけに世界経済の回復が進展する見込みであることや、米バイデン政権の積極的な財政・金融緩和策を背景に米ドル安が進む公算が大きいことで、ブラジルなどの新興国にとっては好ましい市場環境が続くとみられます。
一方、ブラジルにとっての大きな課題は、コロナ危機で中断した国内の経済改革をいかに進めるかにあります。ブラジルの次の大統領選挙は2022年に予定されており、その前年の2021年はボルソナロ政権にとって様々な行財政改革や民営化を推進する重要な年となりそうです。
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