足元でグローバル小型株の底堅い上昇が続く
2020年11月以降、グローバル小型株の底堅い上昇基調が続いています。2020年11月2日を起点としたグローバル小型株のパフォーマンスは米国株やグローバル大型株を上回る傾向にあります(図1)。足元のグローバル小型株の上昇の背景として、次の二つの点が指摘できます。
第一に、11月3日に投票が実施された米大統領選挙はバイデン候補の勝利が確定的となり、米国の選挙と政権移行に関わる市場の不安が後退したことが挙げられます。
第二に、11月中旬以降、医薬品各社が開発中の新型コロナウイルス・ワクチンに関する高い有効性を相次いで公表したことで、ワクチン期待(景気回復期待)がグローバル小型株のパフォーマンス改善に寄与したと考えられます。
ワクチン相場は2021年後半に向けて本格化へ
2021年のグローバル小型株市場にとっては、ワクチン供給によって新型コロナウイルスの問題が終息し、世界経済の回復が軌道に乗るかが重要な焦点となりそうです。
米国では12月11日に米国政府によってファイザー製ワクチンの緊急使用が承認され、12月中旬以降、医療従事者や高齢者などの優先グループに対してワクチンの投与が開始されています(図2)。
もっとも、ワクチンが米国民に広く行き渡るまでには数ヵ月の期間を要するとみられ、米国以外の先進国でも概ね米国と同様の計画でワクチン供給が進むと考えられます。
2020年11月にはワクチン相場がグローバル小型株を押し上げる原動力となりましたが、実際の世界経済の回復を伴った本格的なワクチン相場は2021年央~後半に到来する可能性が高そうです。
株式市場へのリスク・マネーの還流余地が残る
2021年にはワクチン普及によって世界経済が徐々に正常化に向かうと見込まれる中、リスク・マネーが株式市場に還流する余地は大きく残されていると考えられます。
米国におけるマネー・マーケット・ファンド(MMF)残高の推移(図3)を見ると、コロナ危機によって2020年3月から5月にかけてMMFへ約1兆2,000億米ドル(約125兆円*)の大規模な資金逃避が発生しました。その後、コロナ危機が最悪期を脱する中、足元まで約5,000億米ドル(約52兆円*)程度のリスク・マネーの還流が起きているものの、米国のMMF市場には4.3兆米ドル(約450兆円*)もの待機資金が依然として残されている状態にあります。
今後、本格的なワクチン相場の到来により、MMF市場にはコロナ危機前の状態に戻るまで約7,000億米ドル(約74兆円*)程度の資金還流の余地があると計算されます。
リスク・マネーの還流は小型株にも恩恵を及ぼす
こうした株式市場へのリスク・マネーの還流は、小型株にも恩恵を及ぼす可能性が高いと考えられます。
実際、11月以降の米国株式市場では米国小型株ETF(上場投資信託)への資金流入が急拡大しており、投資家の間で小型株を評価する動きが広まり始めています。
2020年11月の米国小型株ETFへの純資金流入額は72.2億米ドル(約7,500億円*)に拡大したほか、12月には16日時点で98.8億米ドル(約1兆円*)の大規模な資金流入がみられました(図4)。
米ドル安はグローバル分散投資を見直す好機に
また、2021年には、バイデン政権のもとでの緩和的な財政・金融政策や投資家のリスク選好姿勢の改善などを背景に、米ドル安が進みやすい環境が想定されます。足元の市場予想では2021年から2022年にかけて緩やかな米ドル安が進むとの見方が大勢です(図5)。
米ドル安の進行は、米国への一極集中的な投資の是正を促し、グローバルな分散投資が見直される好機になると考えられます。
「小型株への評価」と「米ドル安進行(グローバル分散投資の見直し」の二つの要因は、2021年のグローバル小型株の市場環境にとって追い風になると期待されます。
(*)為替換算レート:1米ドル=104円
SARS終息後にグローバル小型株が大きく上昇
コロナ終息後の世界の株式市場の行方を考える上では、2002~2003年にアジアを中心に発生した重症急性呼吸器症候群(SARS)の経験がひとつの指針となりそうです。
当時、世界保健機関(WHO)がSARS流行へのグローバルアラート(世界的警報)を発令したのが2003年3月12日、WHOがSARSの終息宣言を発表したのが同年7月5日でした。SARS終息後、2003年後半から世界経済が回復に向かう過程では、グローバル小型株が同大型株・中型株を大きく上回る上昇を示しました(図6)。
世界景気の回復でグローバル小型株に評価余地
2021年の投資環境でも、目先は欧米諸国での新型コロナウイルスの感染拡大から景気減速のリスクが残るものの、年央以降はワクチンの本格的な普及に伴って世界景気の回復が見込まれます。SARSの経験が示すように、今後の世界景気の回復局面ではグローバル小型株への評価が広がる余地が残されていると考えられます。
グローバル小型株の業績は底堅い回復基調へ
最後に、グローバル小型株の業績予想の動向とバリュエーションについて確認してみましょう。
2020年度のグローバル小型株の一株当たり利益(EPS)の市場コンセンサス予想はコロナ危機が発生した3月から5月にかけて大きく下方修正されたものの、足元では下方修正が概ね一巡しています。
むしろ、足元は2021年度から2022年度の業績予想が上方修正される兆しがみられます(図7上段)。今後の世界景気の回復を背景に、2021~2022年度にはグローバル小型株の底堅い業績回復が見込まれそうです。
業績回復を前提とすれば株価の割高感は限定的
グローバル小型株のバリュエーション(予想PER)は、コロナ危機の影響から利益水準が大きく下がった2020年度予想に基づくと37.8倍と割高な水準にあります。
しかし、コロナ終息後の業績回復が見込まれる2021年度および2022年度ベースの予想PERでは、20.6倍と16.7倍と割高感は限定的に留まっています(図7下段)。
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