金利上昇によりグロース株への調整圧力高まる

足元の米国株式市場では、金利上昇への警戒感からグロース株を中心に調整圧力が高まりつつあります。

3月8日には米10年国債利回が1.59%へ上昇し、2020年2月中旬以来の高水準となりました。米国のグロース株の年初来のパフォーマンスは-3.9%と調整している一方、バリュー株は+8.1%と堅調な上昇を維持しています(図1)。

米10年国債利回り上昇の背景と今後の見通し

足元の米10年国債利回り上昇の背景には、①米議会での大型財政支援策の承認に向けた進展、②ワクチン普及による経済活動正常化への期待、③米連邦準備制度理事会(FRB)と市場との対話の不調(パウエル議長の発言への市場の失望)、などの要因が挙げられます。

当面は米国景気の回復期待から、米10年国債利回りには上昇圧力がかかりやすいとみられます。一方、行き過ぎた金利上昇は米国景気の回復そのものを阻害する要因となることから、今後のFRBの政策対応などにより金利上昇が徐々に一巡する可能性も見ておく必要がありそうです。

現時点での米10年国債利回りの市場コンセンサスでは、2021年末が1.60%、2022年末が1.90%と緩やかな金利上昇が見込まれています。

金利上昇を契機にバリュエーションの修正進む

足元の金利上昇を契機に、米国株の中では割高感のあるグロース株のバリュエーション調整が進みつつあります。

グロース株の12ヵ月先予想PERは昨年末の30倍台から足元では26倍台まで低下しているものの、18倍台のバリュー株との間には依然として大きなバリュエーションの格差が残されています(図2)。

米ハイ・イールド社債スプレッドは安定を維持

一方、米国の社債市場では、足元での米10年国債利回りの上昇にもかかわらず、ハイ・イールド社債スプレッドはコロナ危機一巡後の縮小傾向が依然として維持されています(図3)。これは社債投資家から見た米国企業のクレジット・リスクの高まりはなお限定的であり、米国企業の資金調達環境が安定を保っていることを示唆しています。

今後、米国債利回りの上昇が一巡し始めれば、株式市場の焦点は米国企業の業績動向に向かうと見込まれます。

「業績相場への移行」が今後の米国株の焦点に

米主要企業(S&P500指数採用銘柄)の2020年第4四半期の決算は、一株当たり売上高が前年比+2.6%、一株当たり利益が前年比+3.6%と、いずれもコロナ前の水準を回復する増収・増益となりました(図4)。

これに対して、先行きの企業業績見通しに関しては、直近の市場予想では米国企業の本格的な業績回復が到来するのは2021年後半以降と見込まれています。

このことからも、目先の米国株は金利上昇によるバリュエーション調整の影響を受けやすいものの、2021年後半以降は「コロナ収束後の業績相場への移行」が米国株を下支えする新たなテーマとなる可能性がありそうです。

今後は米国企業の株主還元復活にも注目集まる

また、今後、米国企業の業績が正常化に向かう過程では、配当や自社株買いなど株主還元策にも回復の余地が生まれると考えられます。

2020年のコロナ禍の環境下においては、米国企業は事業存続のため手元資金の積み増しに重点を置き、自社株買いや配当は抑制される傾向にありました(図5)。

もっとも、2020年末時点で米主要企業が保有する手元資金残高は前年比約3割増の2.3兆米ドルに積み上がっています。今後、ワクチン普及に伴って米国経済および企業業績環境の正常化が進めば、米国企業の間で再び潤沢な手元資金を活用した株主還元策を見直す動きが広がり始める可能性があります。

こうした米国企業による株主還元復活の動きは、割安感が残るバリュー株を再評価する新たな切り口としても市場で注目が集まるものと期待されます。

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