テレビの政見放送が大統領選挙戦のカギを握る
ブラジルの大統領選挙戦において、世論の方向性を大きく左右するとみられているのが、8月31日から始まるテレビ・ラジオでの政見放送です。政見放送は火曜日、木曜日、土曜日の週3回、テレビとラジオで1日2回ずつの放送が実施され、特に午後8時30分のプライム・タイムに放送されるテレビ放送の影響度が大きいとされます(図1)。
放送時間の配分は、10%は各候補に均等配分され、残り90%は候補者の所属政党(連立政党含む)の下院議席数に応じて比例配分されることから、政見放送は大政党の候補者に有利に働くと考えられています。
テレビ放送は14年の大統領選挙にも大きく影響
前回2014年の大統領選挙でも、テレビの政見放送が選挙戦の行方に大きな影響を及ぼしました。
2014年の大統領選挙は、当初、労働者党(PT)のジルマ・ルセフ候補とブラジル社会民主党(PSDB)のアエシオ・ネベス候補の二強の争いになるとみられていました。ところが、大統領選挙への出馬を表明していたエドゥアルド・カンポス氏(ブラジル社会党、PSB)が2014年8月13日に飛行機事故で死亡したことを受け、当時、カンポス氏の副大統領候補であったマリナ・シルバ氏が大統領選挙の第三候補として急浮上しました(8月29日の世論調査でシルバ氏の支持率はルセフ氏と拮抗する34%へ急上昇、図2)
これに対して、テレビ放送時間で優位に立つルセフ陣営とネベス陣営が政見放送でシルバ氏を批判するネガティブ・キャンペーン(*)を展開したことで、シルバ氏の支持率は失速し、10月5日の第一回投票においてシルバ氏は得票率第三位(21.32%)で敗退する結果となりました。
(*)誹謗中傷により対立候補をおとしめる戦略
ボルソナロ氏とシルバ氏はテレビ放送で苦戦か
今回の大統領選挙では、主要候補のテレビ放送時間を所属政党の下院議席数から推定すると、PTのルーラ氏が3分14秒と最も長く、次いでPSDBのアルキミン氏が2分37秒と続いています(図3)。世論調査の支持率で上位にあるボルソナロ氏(PSL)やシルバ氏(REDE)は、所属政党の規模が小さいためテレビ放送時間がとりわけ短く、テレビ放送開始後の選挙戦では苦戦が予想されます。
中道政党が結束すればアルキミン氏が優位に
一方、その他の主要政党の中では、テレビ放送での持ち時間が多い中道~中道右派政党(MDBを筆頭にテメル政権の中核を占める政党)は、現時点で最終的な候補者を絞り込めていない模様です(図4)。
今後、7月20日~8月5日の各党の党大会において、中道~中道右派政党が政策方針の近いPSDBのアルキミン氏を統一候補とすることで結束すれば、アルキミン氏はテレビ放送の面で優位に立つ可能性が高まりそうです。
ルーラ氏を除くと左派陣営は分裂・弱体化の傾向
また、左派陣営の最有力候補であったルーラ氏(PT)は、控訴審での有罪判決を受けて逮捕・拘留中であり、大統領選挙への出馬は事実上困難とみられています。
カリスマ性の高いルーラ氏を除くと、左派陣営は分裂・弱体化の傾向にあるようです。仮にルーラ氏が不出馬となれば、ルーラ氏への支持票はPTの代理候補(ハダジ前サンパウロ市長など)やゴメス氏、シルバ氏などに割れる可能性が高いとみられています。
16年の市長選挙で国民の多くは中道政党を支持
実際、2年前の2016年10月に実施されたブラジルの市長選挙では、PTを始め左派は大敗を喫し、国民の多くはPSDBを中心とした中道政党への支持を選択しました(図5)。今回の大統領選挙では、2016年に当選したPSDBの市長らがアルキミン氏の支援に回るとみられています。
アルキミン氏にとって、選挙戦が始まればテレビ放送や市長からの支援などの面で優位な条件が揃うと考えられます。アルキミン氏の当面の課題は、党内や連立政党からの支持を固め、支持率回復を図ることにありそうです。
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