はじめに

スティーブン・ドーバー、 CFA
フランクリン・テンプルトン・インスティテュート
チーフ・マーケット・ストラテジスト

マクロ経済の視点から見て、2022年は世界各国の中央銀行の政策運営が話題の中心となりました。2023年もインフレとの戦いが続きますが、注目は景気後退や米ドル安の可能性に移りつつあります。私は最近、社内エコノミスト数人とこうしたテーマについて話し合いました。以下は、そこで私が得た主な考察です。

  • 米国のインフレは低下傾向だが、予断を許さない状況 これは、インフレが現在も上昇を続け、まだピークを迎えていない欧州とは対照的です。アジアは概して、より穏やかなインフレとなっています。日本では、20年以上ぶりのインフレとなり、実質金利がプラスに転じています。インフレが低下するペースとその度合に関して、当社のエコノミストの見解は分かれています。米国のインフレは、2023年全体で見ると3%程度で推移するというのが、市場のコンセンサスのようです。インフレが低下するペースについて、また米連邦準備制度理事会(FRB)が目標とする2.0%まで下がるかどうかについて、社内で建設的な議論が行われています。
  • 金利はピークに近づきつつある 米国に関しては、FRBの利上げがコンセンサス予想である5%程度、また場合によっては5.25%まで継続するというのが当社の予想です。ただし、政策金利がどれくらいの期間高止まりするかについて、当社エコノミストの見方は様々です。債券投資家、株式投資家への影響を考察するに、市場が調整した場合に投資家の期待に応えてFRBが動く「FRBプット」の可能性は低  いと思われます。
  • 米国の景気後退は、どの程度深刻となるか? 2023年の景気見通しについては、2022年に行われたエコノミストや市場動向に関する調査が裏付ける通り、「 今までで最も予想通りの景気後退」という一言に集約されます。米国が景気後退に陥るということ、またその度合が穏やかであるということを、誰もが「知っている」ようです。何かについて「誰もが」同じ認識を持つという集団心理が働いている時、いつも私は、そうした認識が間違っているという不安に駆られます。社内のミーティングでエコノミストを交えて建設的な議論がなされると、ある程度の安心感が得られます。エコノミストの見方は、景気後退の可能性は全くなし、というものから、10カ月程度に及ぶ「通常の」景気後退というものまで、様々です。
  • 債券への投資配分の増加を検討する好機 債券投資が、再び収益をもたらす状況になっています。金利がピークの水準にあることから、2023年は、債券投資のリターンがプラスとなる可能性があります。現在のポジションがどうであれ、投資家は全体として債券への投資配分を増やす方向に動いている様子です。
  • 債券投資への注目が高まる時は、質への逃避的なバイアスが働く こうした局面では、投資適格債およびソブリン債が特に魅力的と予想され、また景気に対する不安が継続することで、ハイイールド債などのセクターでも、選別的な投資機会が生じると考えています。
  • 米国外での投資機会 今年については、米国の経済成長率が日本を下回るとアナリストは予想しています。これはここ20年以上見られなかった状況です。アジアの新興国や先進国も、米国を上回る成長率を達成しそうです。一方で、欧州経済は大半の予想を上回る成長を見せていますが、これは主に暖冬によるものです。
  • 予想されるボラティリティ 長期の戦略的視点に基づき、デュレーションを若干長期化すべきというのが当社エコノミストの一致した見解ですが、債券市場においては、戦術的な投資機会が存在する可能性があります。
  • 新興国市場には追い風となる可能性 新興国では、債券市場と株式市場が共に良好な環境にあります。相対的に高い成長率とインフレの沈静化に加え、米ドル高が天井を打った可能性があり、特にアジアにおいて投資機会が生じています。
  • アジア全般、特に日本と中国が、アクティブ投資家に新たな投資機会を提供する可能性 かすかにインフレの兆候が見られる日本では、デフレが続いた過去数十年間とは異なるダイナミクスが働いています。一方、中国はコロナ対策のロックダウン措置を終結しつつあり、消費の回復と世界経済の見通し改善を促すでしょう。

これが、2023年に対する私の主な考察です。これらのテーマについて、当社エコノミストの視点を通し、より深い洞察をご提供します。最新のマクロ見通しについて、引き続きご高覧ください。

リスクについて

すべての投資は、元本割れの可能性を含むリスクがあります。投資の価値は下がることもあれば上がることもあり、投資家が投資した全額を取り戻せないこともあります。債券価格は通常金利と逆方向に変動します。そのため、ポートフォリオで保有する債券の価格が金利上昇の影響を受け変動した場合、ポートフォリオの価値は低下する可能性があります。通貨管理戦略を含むデリバティブはコストを伴い、ポートフォリオに経済的レバレッジを創出します。その結果、著しい変動が生じた場合、ポートフォリオの当初投資額を超える損失(および利益)を与える場合があります。株価は、個別企業、特定の産業、業種、市場環境全体などの影響により急速かつ大幅に変動する場合があります。天然資源セクターへの投資は経済情勢の悪化や規制上の変更など、特有のリスクを伴う場合があります。こうした証券の価格は特に短期的に変動します。グロース株は、企業が利益や収益の予測を達成できない場合、価格が大幅に下落する可能性があり、特に短期間では他の証券よりも価格が変動しやすい場合があります。なかでも、時価総額が中・小規模の企業は経済環境の変化に敏感で、大企業に比べ成長見通しの確実性は劣ります。外国証券への投資には、経済の変動、取引慣行の違い、情報入手の困難さ、取引量、為替レートの変動や各国の通貨政策など特定のリスクが伴います。新興市場への投資は同じ要因に関連するリスクが高まります。国債への投資には、発行体政府が当該債務の利払いや元本の償還を行わないリスクを始めとし、一般的に債券や外国証券への投資に関するリスクを伴います。戦略として特定の国、地域、産業、業種、投資形態を対象とする場合、様々な国、地域、産業、業種、投資形態を対象とする戦略に比べ不利な状況に陥った際のリスクは高くなる可能性があります。中国は経済、政治、社会における不安定要因により影響を受ける場合があります。中国の発行体の証券への投資には、法律、規制、政治、経済に係るリスクなど中国特有のリスクが伴います。 地方債は金利変動に対する感応度が高いことから、地方債ポートフォリオの利回り及び価値は市場状況により変動します。債券格付けや債券発行体、保険者、保証人の信用格付け及び財務内容に変動があった場合、その債券の価値に影響を及ぼす可能性があります。低格付け債への投資にはデフォルト (債務不履行) のリスクと元本の喪失が含まれます。アクティブ運用戦略は、市場、金利、投資妙味、相対価値、流動性、ポートフォリオの特定の保有銘柄に係る上昇の可能性などについての運用担当者の判断に誤りがある場合、損失が生じる可能性があります。運用担当者の投資手法や投資判断が望ましい結果をもたらす保証はありません。(歴史的に見て値動きが大きい)情報技術やヘルスケアセクターなど急成長している業界の株式は、商品変更や商品開発のスピードの速さに加え、技術進化を重視する企業を取り巻く規制の変更や新薬及び新しい医療機器に対する規制の承認などの可能性もあることから、特に短期的な変動幅が大きくなることがあります。不動産証券には不動産価格の下落や経済情勢の悪化および規制上の変更など、特定のリスクが伴います。天然資源セクターへの投資は経済情勢の悪化や規制上の変更など、特有のリスクを伴う場合があります。こうした証券の価格は特に短期的に変動します。当資料で示されている企業やケーススタディは説明目的として使用されています。フランクリン・テンプルトン(「FT」)の投資助言を受けるポートフォリオによって現在、株式は保有されているか、もしくは保有されてない場合があります。当資料で提供されている情報は特定の証券、戦略もしくは投資商品の推奨または個別の投資助言を行うものではなく、フランクリン・テンプルトンの運用ポートフォリオの売買意志を示すものではありません。

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