米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ抑制のため積極的な金融引き締めを行う中、高金利と景気後退のリスクを考えると、2023年は厳しい環境が見込まれます。しかし、現時点ではまだ大きな追い風が吹いています。全米の個人消費、労働市場、企業活動、企業のバランスシート、銀行システムは、いずれも比較的健全な状態が続いており、レバレッジも世界金融危機(GFC)前よりもはるかに低い水準となっています。FRBの引き締めにインフレがどの程度迅速に反応するかによって、今後1-2年間の経済シナリオは変わる可能性があります。それでも、来るべき景気後退がGFCのような深刻なものになるとは考えていません。ムーディーズ・アナリティックスの米国経済成長の基本予測は概ね良好で、2022年から2024年にかけて660万人の新規雇用が創出されると予想されています。

歴史的に、米国の収益不動産(CRE)の投資パフォーマンスは、金利上昇局面で堅調に推移してきました1。雇用の増加と収益不動産施設に対する広範な需要を背景に、不動産から生じるキャッシュフローは比較的健全な水準を維持してきました。オフィスやショッピング・センターなど一部の不動産セクターはコロナ禍の影響から完全には回復していませんが、産業不動産、アパート、ライフサイエンス、セルフストレージ(個人向け収納スペース)などの他の不動産セクターは、大幅な持続的な賃料上昇を公表しています。さらに、建設コストの上昇やサプライチェーンの混乱が新規開発プロジェクトにとってさらなる逆風となっていることから、新規供給量については抑えられた水準にあるといえます。地理的には、産業が盛況で、企業に適した政策が取られ、かつ人口動態が健全な高成長市場で、需要のファンダメンタルズの強さを背景に優れた投資パフォーマンスが提供されています。また、サンベルト都市圏の多くの地域と一部の郊外の一等地は、着実な人口移動と企業移転を背景に堅調なパフォーマンスとなっています。

インフレ率の上昇と金利上昇の組み合わせは、2023年の米国CRE市場に重大かつ多様な影響を及ぼすと思われます。不動産デット及びエクイティの資本市場において、いくつかの混乱が発生しています。10年物の資金調達コストは、年初来(2022年11月中旬まで)約200~250ベーシスポイント2上昇しています3。資金調達コストの上昇は、融資基準の厳格化とともに、キャップレートには上昇圧力、不動産価値には下落圧力となっています。クラリオンパートナーズはキャップレートの拡大を予想していますが、その大きさは様々な要因によって異なってくるでしょう。個々の資産のリスクプロファイル(セクター、市場、リース条件)は極めて重要な要因になります。また、営業純利益(NOI)が堅調に成長しているような優良資産は、相対的に堅調に推移するでしょう。

CREへの投資資金となり得る待機資金は、過去最高水準に達しています。併せて、ほとんどの不動産オーナーは過剰レバレッジの状態にはなく、今すぐ資産の売却が必要となるようなプレッシャーもありません。こうした理由から、不動産取引市場は低調な推移が予想され、世界金融危機の際のようなリプライシング(再評価)は発生しないと思われます。物件のNOIの伸び(プラス要因)とキャップレートの拡大(マイナス要因)のペースが、物件価格の調整を左右することになります。

2023年に向けて、クラリオンパートナーズは、この不確実な時期に投資家は長期的な視野を持つべきだと考えています。足元のマクロ経済リスクと市場の混乱は、今後12~18ヶ月の間に魅力的な買い場を生み出す可能性があります。長期的には、CREへの適切な投資配分は、多くの投資家にとって理にかなっていると考えます。歴史的にCREは効果的なインフレヘッジであることが証明されており、ポートフォリオへの分散効果も期待できます4。また、CREが次の市場サイクルに移行する際には、リスク調整後のパフォーマンスを向上させるため、価格決定力が強く長期的なキャッシュフローの拡大が期待される不動産セクターや市場をオーバーウェイトするよう、ポートフォリオを再構築することも重要と考えています。

1. 出所: NCREIF、FRB、ムーディーズ・アナリティクス、クラリオン・パートナーズ・インベストメント・リサーチ、2022年9月

2. 1ベーシスポイントは0.01%に相当します

3. 出所: CBRE、CREFCOA、Cushman & Wakefield、Greenstreet.

4. 分散投資は利益を保証するものでなく、損失リスクから保護するものではありません。

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株式は価格変動が激しく、元本割れの可能性があります。固定利付証券は、金利、信用、インフレ、再投資のリスクがあり、元本割れの可能性があります。金利が上昇した場合、固定利付証券の価値は下落します。国際的な投資は、為替変動、社会的、経済的および政治的な不確実性を含む特別なリスクにさらされ、ボラティリティが増大する可能性があります。これらのリスクは新興国市場においてより大きくなります。商品および通貨は、市場、政治、規制、自然条件など、より高いリスクを含んでおり、すべての投資家に適するとは限りません。

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