金利動向に左右された2023年後半の米国株
2023年後半の米国株式市場は、金利動向に左右される相場展開となりました。8月から10月にかけては、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締めの長期化への警戒感から米10年国債利回りが5%近辺まで上昇し、米国株が調整する要因となりました(図1)。
もっとも、11月以降はFRBの早期利下げ観測の浮上に伴って、金利低下と株高が進行しつつあります。2024年に向けても、米国株式市場は金利の行方がカギを握る展開が続くと考えられます。

2024年には米国の利下げ転換が見込まれる
米国の金融政策は2022年に始まった利上げの最終局面にあり、2024年には利下げへの転換が見込まれます。
ただし、利下げのタイミングや程度については依然として多くの不透明感が残されています。市場予想では、利下げは2024年7月以降との見方が大勢であるほか、パウエルFRB議長も12月1日の講演で早期の利下げに関する議論は「時期尚早」との判断を示しています(図2)。
米10年国債利回りは、利上げ一巡に伴って低下軌道に向かうと見込まれるものの、インフレや米国債需給の問題次第では金利低下ペースが緩やかに留まる(高金利環境が長期化する)可能性も残されているとみられます。

米長期金利の行方を左右するインフレと国債需給
米国のインフレはすでにピークアウトが鮮明化しています。コロナ禍での米国のインフレは当初、財(モノ)や食品、エネルギーを中心に加速しましたが、足元でのインフレ圧力はサービス価格の上昇にシフトしています(図3)。今後はこれまでの利上げの効果によって賃金や家賃の伸び率鈍化がどの程度進むかが、サービス・インフレの鈍化の方向性を左右すると考えられます。
また、米国債需給の面では、足元で財政赤字を背景に米国債の増発が続く一方、FRBの米国債保有残高が縮小傾向にあることで、国内外の投資家によって米国債の安定した市中消化がなされるかが課題として浮上しています(図7)。2024年も米国債需給の問題は、長期金利の上昇リスクとして引き続き注視する必要がありそうです。


米国株の割高感は株価の上値を抑える要因に
当面は高水準の金利環境が続く可能性があることを考慮すると、米国株の割高感への懸念は株価の上値を抑える要因になりやすいと考えられます。2023年11月末時点の米国株の12ヵ月先予想PER(株価収益率)は、ナスダック総合指数が29.4倍、S&P500指数が19.5倍と、いずれも過去の平均を上回る水準にあります(図4)。
一方、米国株のファンダメンタルズに関しては、景気後退懸念などを背景に進んできた利益予想の下方修正に一巡の兆しがみられます。市場が見込む2024年~2025年の利益回復が実現すれば、業績相場への移行によって米国株が下支えされる展開も想定されます(図8)。


2024年の米国株展望:市場は先行きになお慎重
今後の米国株の展望に関しては、市場参加者の2024年の株価見通しは慎重な見方が大勢となっています。
S&P500指数の2024年末の株価予想のコンセンサス(平均値)は4,546ポイントと、概ね現状の株価水準から横ばいでの推移が見込まれています(図5)。市場関係者の間では強気派と弱気派の見方が混在しており、依然として米国の株式相場の方向感は定まっていない模様です。
もっとも、2023年も市場関係者の当初の株価見通しは弱気な見方が優勢でした。2023年前半には景気後退への懸念などから低調な株価見通しが続いたものの、2023年後半に入ると米国景気の軟着陸観測の浮上などから先行きの株価見通しが上方修正される展開となりました。
今後、利下げに向けた金融政策の転換が緩やかに進み、米国景気の回復期待が高まる過程で、相場の先行きをめぐる投資家心理が改善する可能性もあると考えられます。

株式と債券への分散投資を見直す余地が広がる
また、米長期金利の上昇に伴って、足元では米国株の益利回りとの差が縮小しており、債券と比較した米国株の相対的な投資妙味が低下する傾向にあります(図6)。
過去の低金利環境では株式の投資妙味の優位性が相応に高かったものの、足元での債券利回りの魅力復活を踏まえると、インカムに着目した株式と債券への分散投資を見直す余地が広がりつつあると言えそうです。

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