利回りの面でブラジル国債の投資魅力高まる

足元で米国の利上げが終盤に差し掛かり、主要通貨に対する米ドル高が一巡しつつあることで、新興国への投資を見直す機運が広がりつつあります。

特に主要国の中でも利上げで先行してきたブラジルでは、足元の2年国債利回りが12%近辺の高水準にあり、利回り面でブラジル国債の投資魅力が高まっています(図1)。

今後はブラジル中銀の利下げ転換が見込まれる

ブラジル中銀は3月22日の金融政策委員会(COPOM)において、政策金利を5会合連続で13.75%に据え置く決定を下しました。インフレの終息が進みつつあることで、ブラジル中銀は政策の様子見姿勢を継続しています。

足元では、3月の拡大消費者物価指数(IPCA)は市場予想を下回る前年比+4.7%へ低下し、2021年1月以来の低水準となりました。市場では、インフレ鈍化を背景に2023年後半以降にブラジル中銀が段階的な利下げに転じるとの見方が大勢となっています(図2)。

ブラジル中銀の先行きの金融政策をめぐる焦点は、ルーラ政権の財政政策の行方に集まりそうです。ルーラ政権が財政健全化路線を維持するかが今後の中銀の利下げ判断の重要な決定材料になると考えられます。

ルーラ政権が財政健全化を目指す計画を公表

こうした中、ハダジ財務相は3月30日、新政権の財政政策運営方針を定めた新財政ルールを公表しました(図7)。

ルーラ政権は厳格な歳出コントロールを求める現行の歳出上限法を廃止し、新財政ルールを導入することで、財政健全化の推進と公共投資予算の確保の両立を目指しています。ルーラ政権の計画では、2024年に基礎的財政収支の均衡を実現し、2025年以降、財政黒字に転換する目標が掲げられてます(図3)。

このほか、新財政ルールの中には、基礎的財政収支の目標が未達となった場合、歳出の伸びを抑制する措置なども盛り込まれました。 

新財政ルールへの市場の評価と今後の注目点

ルーラ政権の新財政ルールが公表された3月30日には、ブラジル株やレアル相場が共に上昇で反応するなど、新財政ルールへの市場の評価は好意的とみられています。

新財政ルールの導入には議会での承認手続きが必要であり、今後は財政ルールを巡る議会審議の行方に焦点が移ると考えられます。また、ルーラ政権は4月中を目途に公共インフラ整備を目的とした「新成長加速プログラム(PAC)」計画の公表を予定しており、ルーラ政権の財政政策に対する注目は続きそうです。

大統領選挙以降、安定基調にあるレアル相場

為替市場では、2022年10月のブラジル大統領選挙以降、レアル相場の安定基調が続いています。足元のレアルの対米ドル相場は1米ドル=4.9レアル近辺まで緩やかに回復しているほか、レアルの対円相場も1レアル=27円近辺での推移が続いています(図4)。

特に大統領選挙以降は、ルーラ政権への期待感から、海外投資家のブラジルへの証券投資が流入傾向にあることがレアル相場の下支え要因となっている模様です(図5)。

また、主要資源である鉄鉱石価格の底堅さを背景に、ブラジルの貿易黒字の拡大が続いていることも、実需面からレアル相場の押し上げ要因となっています(図6)。とりわけ、足元では中国の経済活動再開の動きが鉄鉱石など資源需要の回復に繋がっていることも、ブラジル経済やレアル相場への追い風になっていると考えられます。

ブラジル国債の長期的な投資リターンの妙味

ブラジル国債(レアル建て)の長期的なトータル・リターンの推移を見ると、高い利回りを背景に安定した投資収益が持続してきました(図8)。足元においてもブラジル国債の平均利回りは12%近辺の水準にあり、利回りの面でのブラジル国債の投資魅力は引き続き高いと言えます。

今後、ルーラ政権の財政運営の規律が維持され、レアル相場の安定が継続すれば、海外投資家によるブラジル国債への見直しが一段と進む可能性がありそうです。

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