回復でスタートした2023年の米国株式市場

2023年の米国株式市場は回復で始まりました。年初来の米国株は、2022年の調整が大きかったハイテク株やグロース株の上昇が顕著な傾向にあります(図1)。

もっとも、足元の株高は企業収益の回復や政策支援による裏付けが弱いという面もあり、2月に入ると金利上昇への警戒感から米国株の回復が鈍り始めています。

2023年の世界経済には、引き続き多くの課題やリスクが残されています(図7)。特に当面の米国株式市場にとっては、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ長期化のリスクや米国の景気後退リスクの行方が焦点となりそうです。

FRBの利上げ長期化が市場のリスクとして浮上

足元の米国株式市場では、米国の利上げ長期化への懸念が株価の回復を抑える要因となっています。

米連邦公開市場委員会(FOMC)が行われた2月1日の時点では、市場は2023年内の早期の利下げ転換を織り込んでいました。しかし、2月以降の経済指標で堅調な米国の雇用や根強いインフレ圧力が確認されると、足元では5%を超える高水準の政策金利が2023年末まで維持されるとの見方が市場の大勢となっています(図2)。

米国の景気後退リスクへの懸念も残る

足元の底堅い米国経済の状況から景気後退への懸念は一時的に後退しているものの、高金利環境の長期化によって、2023年後半にかけて米国の景気後退リスクが再び高まる可能性に留意が必要と考えられます。

市場では既に景気減速を織り込み、米国企業の利益予想の下方修正が進行しています(図3)。

2022年の米国株は金利上昇によるバリュエーション悪化が株安の主要因となってきましたが(逆金融相場)、2023年に入ると利益予想の下振れが株価の抑制要因となる逆業績相場への移行が進みつつあります(図8)。

2023年の市場環境では、高金利や景気後退リスクに対する投資対象の耐性が問われるとみられ、安定収益が期待されるインカム投資が見直される可能性がありそうです。

利回り復活で債券投資への注目高まる

インカム投資の観点からは、利回りの復活で投資妙味が増す債券への注目が高まりつつあります。

2022年には主要国の一連の利上げに伴って、世界中でマイナス金利債券の残高縮小が急速に進みました(図9)。

米国債券市場では、FRBの大幅利上げによって米10年国債利回りが4%近辺に上昇し、これに連動して米国地方債や社債の利回り上昇が顕著となっています(図4)。

今後、米国の利上げ局面が終盤に差し掛かり、米10年国債利回りの上昇が一巡に向かえば、債券投資の魅力的なエントリー・ポイントが到来することが期待されます。

見直される米国高配当株の安定性

一方、株式投資の面では、高金利の長期化や景気後退リスクが残る不透明な市場環境の中、安定した運用収益が期待される米国高配当株への見直しが続きそうです。

足元で景気後退リスクを織り込む形で利益予想の下方修正が進み、2023年は米国株の利益の伸び悩みが見込まれる中でも、株主還元の継続性の観点から米国株の配当は安定した伸びが予想されています(図5)。

実際、投資収益の面でも、2022年以降、米国高配当株は米国株式市場の中でパフォーマンスが改善傾向にあります(図6)。高金利の長期化という逆風の市場環境では、安定した収益基盤を持ち、増配を継続する米国高配当株への投資家の選別が一段と進む可能性があります。

インカムに着目した投資の選択肢広がる

このように、2023年に入り、インカムに着目した債券や株式への投資の選択肢が広がりつつあります。

足元では投資家の選好にも変化の兆しがみられます。2021年以降、米国の配当・インカム株型の上場投資信託(ETF)への安定した資金流入傾向が継続しているほか、2023年に入ってからは米国の債券ファンドへの資金流入が復活する兆しもみられます(図10・11)。

インフレと高金利が進む経済環境の変化に伴って、投資家のインカム志向が定着すれば、インカム資産への需要が高まることが期待されます。

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