2025年3月
スバシュ・ピライ
APAC ソリューションズヘッド
ピーター・ブルー, CFA, CAIA, FRM
オルタナティブ ソリューションズヘッド
ヴァニート・チャダ, CFA
ポートフォリオマネジャー
ポール・フレイント
ポートフォリオマネジャー
アセットオーナーに共通する課題
世界中のアセットオーナーとの対話の中で、常に一つの問いが浮上します。
「投資家はどうすれば、よりレジリエンス(強靭性・回復力)を持ったポートフォリオを構築できるのか」ということです。
市場の不確実性を招き、投資家に深刻な脆弱性と警戒感をもたらす要因は数多く存在します。非伝統的な通商政策は、インフレを悪化させ、一時的な価格ショックを引き起こし、経済成長を鈍化させたりする可能性があります。また、投資家は、インフレを抑制しつつ成長を促進しようとする米連邦準備制度理事会(FRB)やその他の中央銀行の動きにも注目しています。その一方で、急速に変化する地政学的状況、サプライチェーンのニアショアリング(近隣国への移転)、高まる貿易の不確実性などにより、世界はますます多極化しています。
2022年に債券が株式のヘッジとして不十分だと判明した記憶は、投資家の脳裏にまだ鮮明に残っています。このタイムリーなトピックについて、当社の投資プロフェッショナルたちにラウンドテーブル形式で議論してもらい、彼らの洞察や、レジリエントなポートフォリオを構築するための様々なアプローチを評価する枠組みを共有してもらいます。Q: 債券は伝統的にポートフォリオの緩衝材と見なされてきましたが、2022年にはその役割を果たせませんでした。株式・債券ポートフォリオの問題点は何であったのでしょうか?
スバシュ: 多くの場合、債券が株式に対してある程度のヘッジ手段として機能してきたことは認識すべきでしょう。経済原則に照らしても、これは理にかなっています。経済成長が鈍化すれば、中央銀行は利下げを行い、債券価格は上昇します。過去約40年間、インフレが抑制されてきた状況下では、先進国の中央銀行にとっての主な課題は、特に2008年の世界金融危機以降、景気後退やデフレリスクを回避することでした。
これは、過去の金融サイクルにおいては、金利が一貫して低下傾向にある環境でした。しかし、インフレが再燃すると、債券は株式の効果的なヘッジとならない場合があります。2022年には、中央銀行が利上げを進める中で、世界の株式と債券のリターンはそれぞれ -18%、-16%となりました¹。急速な金融引き締めがリターンに悪影響を与えたのです。もしインフレ期待が固定されず、不安定な状態になった場合、さらに大きな損失が発生していた可能性があります。こうしたリスクは、債務の対国内総生産(GDP)比率が上昇する中でも、なお存在しています。
Q: 今後のインフレ要因については、どのように見ていますか?
スバシュ : 大局的に見れば、インフレ期待は安定化し、インフレ水準は鈍化し続ける可能性があると考えています。しかし、しばらくの間は一進一退となるかもしれません。住宅や医療費など、一部のインフレ要因は他よりも価格粘着性が高い傾向があります。また、財に関しては、サプライチェーンの再構築やグリーンエネルギーへの移行によって、価格変動が続く可能性があります。
2022年、各国中央銀行はインフレ抑制のために協調的かつタカ派的(引き締め的)な姿勢を取りましたが、これが債券のパフォーマンスを押し下げました。現在では、ハト派的(緩和的)な中央銀行もあれば、タカ派的な中央銀行もあり、様子見を続けている中央銀行もあります。彼らの判断の一因には、関税が経済成長とインフレにどのような影響を与えるかについての見通しが含まれていると考えられます。関税は持続的なインフレ圧力となるのか、それとも単なる一時的な価格上昇にとどまるのかの結論はまだ出ていません。しかし、私は、財政の持続可能性に関する無視できないリスクが、インフレを引き起こし、利回りを押し上げ(債券価格を押し下げ)る可能性を常に考慮しています。
Q: その点について、もう少し詳しく説明していただけますか?
スバシュ : 政府債務は新型コロナウイルス感染症のパンデミックにおける財政刺激策によって急増しました。それを抑制しようという動きがあったとしても、具体的な政策には結びついていません。もし政府が支出を続けるなら、さらなる債務によって財源を確保する必要があります。この債券発行の増額は、イールドカーブの長期ゾーンに上昇圧力をかけ、投資家はこの政府債務を購入にはより高い利回りを要求するようになるでしょう。そして、こうした財政支出がインフレを再燃させる可能性があるのではないかと、私は懸念しています。
Q: 安全性を提供するという点で、今後も債券は役に立つでしょうか?
スバシュ : 長期的に見れば確実に役割を果たしますし、深刻な成長ショックが発生した場合にも依然として機能するでしょう。問題なのは、真のポートフォリオ・レジリエンスのためには、単なる債券と株式の組み合わせ以上のものが必要になる、ということです。なぜなら、時には株式と債券が同じ方向に動くことがあるからです。インフレが抑制されていた1990年代(グレート・モデレーション)には両者の相関は概して高く、2022年にも急上昇したことが観測されています。
詳細は、レポート「市場変動に備えるポートフォリオのレジリエンス強化: オルタナティブ資産、リスクプレミアム、テールリスク・ヘッジ」をご覧ください。
リスクについて
すべての投資には、元本割れの可能性を含むリスクが伴います。
株式は価格変動の影響を受け、投資元本を割り込むことがあります。
債券には金利リスク、クレジットリスク、インフレリスク、再投資リスクがあり、投資元本を割り込むことがあります。金利が上昇すると、債券の価値は下落します。債券の信用格付けの変更、または債券の発行者、保険会社、保証人の信用格付けや財務力の変更は、債券の価値に影響を与える可能性があります。低格付けのハイイールド債は、価格の変動が大きく、流動性が低く、デフォルトの可能性が高くなります。
異なる戦略、資産クラス、投資対象間で資産を配分しても、有益でない、または望ましい結果が得られない可能性があります。ある戦略が特定の国や地域の企業に投資する限りにおいて、地理的により広範に分散された戦略よりもボラティリティが高くなる可能性があります。
コモディティ関連投資は、コモディティ指数のボラティリティ、投資家の投機、金利、天候、税金、規制の動向などのさらなるリスクが伴います。
多くのオルタナティブ投資戦略への投資は複雑かつ投機的であり、重大なリスクを伴うため、完全な投資プログラムと見なすべきではありません。投資する商品によっては、オルタナティブ戦略への投資は流動性が限定的であり、投資元本の全額を失う余裕のある方にのみ適しています。分散投資は利益を保証するものでも、損失から保護するものでもありません。
プライベート証券(プライベート・エクイティやプライベート・クレジットなど)またはそれらに投資するビークルへの投資は、非流動的と見なすべきであり、リターンの保証がない長期的なコミットメントが必要となる場合があります。こうした投資の価値およびリターンは、特に市場金利の変化、全般的な経済状況、特定産業の経済状況、金融市場の状況、投資対象発行体の財務状況などによって変動します。また、投資先企業が証券取引所に上場する保証はなく、一部の投資については確立された流動的な流通市場が存在しないため、その市場価値や、投資家が有利な時期や価格で売却する能力に悪影響を及ぼす可能性があります。
アクティブ運用:アクティブ運用は利益を保証するものでも、市場の下落から保護するものでもありません。分散投資は利益を保証するものでも、損失から保護するものでもありません。
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