2022年の豪ドル相場の3つの焦点
2020年のコロナ危機の発生以降、豪ドル相場は底堅い回復が続いてきました。2021年には豪ドルの対米ドル相場は米国の金利上昇観測や豪州でのデルタ株感染拡大などから弱含む局面もみられたものの、豪ドルの対円相場は概ね1豪ドル=80~85円のレンジで推移しました(図1)。
2022年の豪ドル相場の焦点としては、①米国と豪州の金融政策見通し、②豪州でのオミクロン株感染の終息と景気回復の行方、③資源価格の動向、が挙げられます。
RBAの政策は量的緩和終了から利上げに転換へ
1月5日に公表された米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録では早期の利上げと保有資産縮小が議論されていたことが明らかとなり、市場では米国の利上げ観測が再燃しています。豪州においても、2022年には量的緩和の終了から利上げに向けた政策の転換が進みそうです。
豪州準備銀行(RBA)は2022年最初の会合である2月1日の理事会で、国債等を買い入れる量的緩和策の見直しを検討する予定です。昨年12月16日の講演でフィリップ・ロウ総裁は、現行のRBAのメイン・シナリオでは2月中旬より国債買い入れペースを一段と縮小し、5月に量的緩和を終了するとの見通しを示しています。
1月4日に公表された豪経済紙(AFR紙)の市場コンセンサス調査によれば、市場関係者の間では早ければ2022年後半、遅くとも2023年前半までにRBAが利上げに踏み切るとの見方が大勢となりつつある模様です。
また、金利先物市場では、2023年から2024年にかけて米国を上回るペースでの豪州の利上げ期待が織り込まれています(図2)。2024年に向けては豪州と日本の間の政策金利の格差が拡大する可能性が高く、金利上昇期待が豪ドル・円相場の下支え要因になると期待されます。
足元で急拡大する豪州でのオミクロン株感染
豪州では、2021年末からオミクロン株の感染が急拡大しています。新規感染者数はデルタ株の第三波を大幅に上回り、足元では1日当たり数万人レベルに急増しています。もっとも、豪州では16歳以上の人口の90%以上が2回のワクチン接種を完了させていることもあり、感染者数の急増と比べて死亡者数は抑制傾向にあります(3頁図6)。
ブースター接種加速で経済活動は再び活性化へ
豪州政府は新型コロナウイルスと経済活動の共生を図るため、足元のオミクロン株拡大でもロックダウン(都市封鎖)は行わない方針を維持しています。
2021年後半の感染第三波(デルタ株)の終息以降、豪州では順調な経済活動の再開が進んできましたが、足元の感染第四波を受けて2022年1月の経済活動は小幅に鈍化する傾向にあります(図3)。
ただし、豪州ではワクチンのブースター接種が急速に進みつつあり、すでに3回目接種率は16歳以上人口の20%超の水準に達しています(図4)。現在の接種トレンドが続けば、2022年上半期中にも豪州におけるオミクロン株感染は終息に向かい、経済活動の再活性化が豪ドル相場の見直し材料として浮上する可能性がありそうです。
グリーンフレーションが豪州の資源価格を押し上げ
最後に、足元の豪ドル相場には高水準のコモディティ価格と比較した割安感が残されています(図5)。
2021年後半には、豪州の最大の輸出資源である鉄鉱石の価格下落が進んだものの、足元では1トン=120~130米ドル近辺まで価格回復が進んでいます。中国では2月の北京五輪にかけて環境対策としての鉄鋼減産圧力が続く可能性が高いものの、五輪後の鉄鋼生産の回復期待が足元の鉄鉱石価格を支えている模様です。
また、2021年には世界的な脱炭素化の動きがコモディティ価格の上昇を引き起こす「グリーンフレーション」が顕在化しました(4頁図8)。すでに足元でも鉄鉱石に次ぐ豪州の輸出資源である石炭や液化天然ガスの価格が大きく上昇しており、2022年も豪州の資源はグリーンフレーションの観点から注目度が高まりそうです(3頁図7)。
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