
米大統領選挙以降、軟調な推移続く豪ドル相場
2024年末からの豪ドル相場は、対米ドルで軟調な推移が続いてきました。特に2024年11月の米大統領選挙以降、トランプ政権の関税政策などをめぐる不透明感から米インフレ懸念が台頭し、主要通貨に対する米ドル高が進んだことが豪ドルの下落要因になったと考えられます(図1)。
2025年の豪ドル相場の先行きを左右する注目点としては、①豪州と米国の金融政策の行方、②トランプ政権下での基軸通貨米ドルの方向性、③トランプ政権の関税政策の豪州および世界経済への影響、が挙げられます。

豪州準備銀行は約4年ぶりの利下げを決定
豪州準備銀行(RBA)は2月18日、政策金利を0.25%引き下げ、4.10%とする決定を下しました。RBAの利下げは2020年11月以来、4年3ヵ月ぶりとなります(図2)。
RBAは利下げの背景として、インフレ圧力が予想よりも早く緩和していることで、「インフレ率が2.5%近辺に持続的に向かっているとの自信を深めた」ことを挙げました。
ただし、RBAは先行きの利下げに関してはなお慎重な姿勢を維持しています。豪金利先物市場では、2025年内は追加で2回程度の緩やかな利下げが織り込まれています。
一方、豪州より先行して2024年9月から利下げを開始した米連邦準備制度理事会(FRB)も、トランプ政権の政策を見極めながら利下げを急がない姿勢を示しています。当面のところは、豪州と米国の政策金利は概ね足並みを揃えた推移となる可能性が高そうです。

海外投資家の豪州への債券投資が活性化
もっとも、米国と並んで豪州の高金利環境が続いていることは、海外投資家の豪州への債券投資流入の活性化に繋がっています(図6)。10年国債利回りで比較した豪州と日本の金利差は依然として3%程度の開きがあり、豪州の金利の投資妙味の高さは今後も豪ドルの対円相場を下支えすることが期待されます(図7)。


焦点となるトランプ政権下での米ドルの方向性
米国・豪州の中銀が今後の利下げに慎重な姿勢を維持する中では、トランプ政権下での基軸通貨米ドルの方向性が豪ドル相場を左右する要因になりやすいと考えられます。
トランプ氏の再選が決まった2024年11月の米大統領選挙以降、投機筋の米ドル買いが拡大し、足元でも高水準の米ドル買い持ちポジションが維持されています(図3)。2025年1月20日のトランプ政権の発足後も、関税などをめぐる経済政策の不透明感やインフレ再燃への警戒が市場での米ドル高圧力を支える要因になっていると言えます。

投機筋は米ドル買いの裏側で豪ドル売りを維持
もっとも、今後の通商交渉の進展次第では、関税政策への市場の懸念が後退し、投機筋による米ドル買い・各国通貨売りの巻き戻しが起きる可能性も残されているとみられます。投機筋による米ドル買いの裏側で売られている通貨の内訳を見てみると、カナダ・ドルやユーロ、スイス・フランへの売りポジションの規模が大きいほか、豪ドルに対しても一定規模の売り持ちが膨らんでいます(図4)。
今後、トランプ政権の政策不透明感に伴う米ドルへの資金集中が修正に向かう場合には、売りに偏ったポジションの反動から豪ドルへの見直しが進むことが期待されます。
最新の市場予想では、豪ドルの対米ドル相場は2025年末から2026年にかけて緩やかに持ち直す展開(豪ドル高・米ドル安)が見込まれています。こうした中、豪ドルの対円相場は2026年に向けても安定した推移が続くと予想されており、米ドルからの通貨分散先として豪州への証券投資が再評価される可能性がありそうです。

当面のリスクはトランプ政権の関税政策の影響
当面のリスクとしては、トランプ政権の関税政策の影響を慎重に見守る必要がありそうです。
米国にとって豪州向けの貿易収支は黒字であることから、豪州への直接的な関税引き上げのリスクは限定的とみられています。ただし、米国の貿易赤字額が大きい中国や欧州などへの関税引き上げが世界的な貿易戦争に発展すれば、市場心理(リスク・センチメント)に敏感な豪ドルにも間接的な影響が及ぶ可能性があります。


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