米ドルの信認問題の台頭で米ドル売りが広がる

 足元の米国金融市場では、2025年4月のトランプ関税ショックからの米国株の回復が進む一方、米ドルは主要通貨に対して下落傾向が続いており、米国株と米ドルのデカップリング(分断)が広がりつつあります(図1)。

 米ドルに対する弱気の見方が根強い背景には、トランプ関税をめぐる不透明感や、財政赤字拡大への懸念などがあり、市場では米ドル資産への投資を見直すかどうかの「米ドルの信認問題」に対する議論が高まっています。

米ドル安の裏側で豪ドルが見直されつつある

 こうした米ドル安の進行の裏側で、見直されつつある通貨のひとつが豪ドルです。

 豪ドルは、2024年11月の米大統領選挙直後には対米ドルで軟調な動きが続いたものの、足元では米ドルからの分散投資先を模索する動きが広がる中で、緩やかな回復が進んでいます(図2)。さらに、今後の豪ドル相場に関しても、足元では2026年末の豪ドル相場の市場予想が上方修正される傾向にあるなど、豪ドルの先行きに対して前向きな見方が広がりつつあります(図3)。

世界的に金利と為替の連動性が薄れる傾向

 足元の世界の為替市場では、基軸通貨である米ドルの「信認問題」が大きな焦点となることで、金利と為替の連動性が薄れる傾向がみられます。

 一般的には、「利下げを積極的に行う国ほど、金利差の面で不利になり、その通貨は下落しやすい」という考え方がありますが、2025年初来の足元の局面ではその傾向とは異なり、ユーロ圏やニュージーランド、スイス、英国など積極的に利下げを進めてきた国・地域でも、対米ドルでの通貨パフォーマンスが堅調に推移する事例がみられます(図7)。この背景には、トランプ関税によって世界経済の先行き不透明感が高まる中で、各国の金融・財政政策の景気下支え策が市場から評価されやすくなっていることなどがあると考えられます。

豪州の利下げ余地は今後の豪ドルの再評価要因

 一方、他国に比べて利下げの開始が遅れてきた豪州では、2025年初来の豪ドルの上昇率(対米ドル)は+4.4%と限定的に留まっています。

 ただし、今後に関しては、インフレ圧力の後退によって豪州準備銀行(RBA)の金融政策には緩和余地が広がりつつあり、これは景気への下支え効果を通じて、今後の豪ドルへの再評価に繋がる可能性がありそうです

 RBAによれば、経済や物価を刺激も抑制もしない平均的な中立金利の水準は2024年末時点で2.7%と推定されています。これに対して、現時点のRBAの政策金利は3.85%の水準にあり、中立的な領域までは1%前後の利下げ余地があることが示されています(図8)。実際、金利先物市場では、2026年に向けて政策金利が3%程度まで引き下げられるとの見通しがすでに織り込まれています。

投機筋ポジションが示す今後の豪ドルの反発余地

 また、為替市場における需給の観点からも、豪ドルには今後上昇する余地が残されていると考えられます。

 短期資金の面では、投機筋による豪ドル先物のポジションは、6月10日時点で45.6億米ドルの売り越しが維持されています(図4)。投機筋のポジションはしばしば「逆張り指標」としてみなされることがあります。つまり、現在のように豪ドルへの売り圧力が強い局面では、今後の政策変更やファンダメンタルズの改善によって、売りポジションの巻き戻し(買戻し)が起きた場合、豪ドルの上昇が一段と促される可能性があります

世界の外貨準備の分散先として注目される豪ドル

 また、中長期資金の面では、世界の外貨準備資金の豪ドルへの投資拡大の動きが、豪ドル相場の安定を支える要因になることが期待されます(図5)。

 特に足元では、トランプ政権の政策をめぐる不透明感や米国債格下げ問題などを背景に、世界の投資家の間で米ドルに代わる信用力の高い投資先を模索する動きが強まりつつあるとみられます。

 こうした中、主要格付け会社3社全てから最上位のAAA格付けを維持している国の中でも、豪州は最も高い金利水準にあります。財政規律と利回りの高さを兼ね備えた豪ドルは、外貨準備の分散先として有力な選択肢となる可能性が高いと考えられます(図6)。

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