2025年4月10日
スティーブン・ドーバー, CFA
チーフ・マーケット・ストラテジスト
ヘッド・オブ・フランクリン・テンプルトン・インスティチュート
ラリー・ヘイスウェイ
リサーチ・ディレクター
フランクリン・テンプルトン・インスティテュート
リック・ポルシネロ, CIMA®
シニア・マーケット・ストラテジスト
フランクリン・テンプルトン
米国および世界の株式市場が急落した後、米国債券市場にも大きな売り圧力がかかっています。米国10年国債利回りは、ここ数日で約50ベーシスポイントも急上昇しました。本稿では、こうした市場の動きが投資家にとってどのような意味を持つのかを解説します。
- 今回の米国債利回り急上昇は、当社の見解では、おそらくテクニカルな要因による売りを反映したものであり、証拠金不足(マージンコール)に直面したどこかの機関投資家による強制的な売却によって拍車がかかった可能性があります。債券利回りの上昇は、今のところ、インフレや米国の債務問題、あるいは国際的な資金フローに関する市場の見通しが変化したことを示すものではありません。
- もし売り圧力がさらに強まるようであれば、米連邦準備制度理事会(FRB)が市場への介入を余儀なくされる可能性があります。しかし、当社では、その介入が政策金利の引き下げという形になるとは考えておらず、むしろ、特別な流動性供給オペレーションが必要になる可能性があります。
- 注目すべき点として、本日行われた米国10年国債の入札は順調で、需要も堅調であり、入札後に利回りは低下し始めました。
- まず、事実関係から確認しましょう。市場で何が起きているのでしょうか。最も重要な点は、長期国債の利回りが急上昇しており、そのペースが短期利回りをはるかに上回っていることです。これにより、イールドカーブのスティープ化(利回り曲線の傾きが急になること)が進んでいます。
- なぜこのようなことが起きているのでしょうか。理論的には、債券利回りの急上昇にはいくつかの要因が考えられます。例えば、関税が米国のインフレを押し上げることを投資家が懸念しているのかもしれません。あるいは、米国が抱える巨額の財政赤字や債務水準を投資家が懸念し始めた可能性もあります。または、関税の影響を受ける中国や日本などが米国債の購入を停止したり、保有する大量の米国債を売却したりするのではないか、と投資家が心配しているのかもしれません。
- しかし、現時点では、これらのいずれも主な理由とは考えにくい状況です。(物価連動国債であるTIPSの価格から算出される)市場の期待インフレ率を示す指標は、急激な上昇を示していません。4月8日時点で、10年物のブレークイーブン・インフレ率は2.22%と落ち着いています。財政赤字と債務に関する見通しも、特に大きく悪化してはいません。それどころか、関税からの税収はむしろ財政を引き締める効果を持ちますし、2017年の減税・雇用法が延長される可能性や、今年大規模な減税が行われる可能性についても、状況は大きく変わっていません。最後に、もし外国の中央銀行や政府系機関などが米国債の購入を減らしているのであれば、通常、債券市場と連動して米ドルも下落するはずです。米ドル相場はやや軟調ではありますが、債券市場で見られるような売り圧力にさらされている様子はありません。
- したがって、現時点で最も可能性が高いのは、米国債に対するレバレッジを用いたポジション(例えば、ベーシス取引やスワップ市場でのポジションなど)が、今週の売り圧力の原因であるということです。この動き自体が一時的なものか、より深刻な問題かはまだ判断できません。もしこの売り圧力が収まれば、大きな混乱には至らないと当社は考えています。一方で、一つまたは複数の金融機関が「過大なリスク」を取っており、不本意な売却を迫られている場合には、FRBがさらなる市場の混乱を防ぐために介入が必要だと判断するかもしれません。しかし、その場合でも、FRBの関与は政策金利の引き下げではなく、 的を絞った流動性供給措置へのコミットメントという形になるでしょう。
- 最後に、もし長期金利の上昇が続くようであれば、それは世界の株式市場の下落やクレジット・スプレッド(社債などのリスクプレミアム)の拡大に加え、金融環境の一段の引き締めにつながります。その意味においては、米国および世界経済の成長見通しや企業収益への懸念を一段と高めるリスクであると考えられます。
リスクについて
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株式は価格変動リスクを伴い、元本割れの可能性があります。
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