2025年4月24日

スティーブン・ドーバー, CFA
チーフ・マーケット・ストラテジスト
ヘッド・オブ・フランクリン・テンプルトン・インスティテュート

トランプ大統領就任後の最初の100日間は、市場にとって波乱含みの展開となりました。フランクリン・テンプルトン・インスティテュートのスティーブン・ドーバーが、フランクリン・テンプルトンのシニア投資専門家とともに、関税の影響、米国経済に関する洞察、主要セクターの投資機会、より広範な経済動向について分析します。

先日、私は当社の経験豊富な投資専門家を招き、パネルディスカッションを主宰しました。そこでは、トランプ大統領就任後100日間の影響、関税問題、それに伴う市場のボラティリティについて議論を交わしました。

パネリストとして、ジェニファー・ジョンストン(フランクリン・テンプルトン債券グループ、地方債リサーチ・ディレクター)、ジェフ・シュルツ(クリアブリッジ・インベストメンツ、経済・市場戦略責任者)、ジョナサン・カーティス(フランクリン株式グループ、最高投資責任者兼ポートフォリオ・マネージャー)が参加しました。

彼らからは、米国経済の底堅さ、テクノロジー・セクターが抱える課題とそこに存在する投資機会、さらには広範な経済・市場のトレンドについての見通しが示されました。本稿では、パネルディスカッションで分析された主要な論点を掘り下げます。

米国経済の底堅さ

パネリストの見解では、米国経済は引き続き底堅さを維持しています。足元でいくつかの課題はあるものの、労働市場は健全です。2025年4月17日時点の新規失業保険申請件数が21万5,000件に低下したことは、現在の労働力人口を考慮すると歴史的に見ても低い水準です。これは、多くの労働者が雇用を維持しており、消費活動の基盤となる労働所得も依然として力強いことを示唆しています。また、消費者心理こそ悪化しているものの、実際の個人消費は幅広い分野で堅調さを見せています。こうした状況から、米国の消費者は現在の消費活動を続ける余力があると見ています。

「米国例外主義」に対するリスク

いくつかの要因が重なり、足元では、米国の株価水準、債券金利、そして米ドルが同時に下落する局面がありました。一部投資家による強制的な売却や、これまで米国資産に流入していた海外資金の巻き戻しが、米国国債と米ドルへの下押し圧力となっています。こうしたリスク回避の動きは、長年にわたって米国資産が積み上がってきた状況が背景にあります。

私たちは、米ドルが過去3~5年間、割高な水準で推移してきたと考えており、いずれ何らかの調整が入ることはかねてより予想していました。加えて、市場ではトランプ大統領が連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長を更迭するのではないかとの観測が広がり、神経質な反応が見られましたが、後に大統領自身がその意図を否定しました。FRBの独立性は米国の資本市場にとって極めて重要であり、それを脅かすいかなる動きも市場に大きな混乱をもたらしかねません。

もし米国経済がスタグフレーション(景気後退とインフレの併存)に見舞われれば、バリュー株(割安株)の魅力が増すと考えられます。歴史的に見ると、バリュー株は、高インフレ・低成長という環境下で良好なパフォーマンスを示す傾向が確認されています。過去のスタグフレーション期を振り返っても、エネルギー、素材、ヘルスケアといったセクターは堅調でした。ポートフォリオの分散をさらに進める上では、コモディティ、貴金属(特に金)、そして資源国への投資も有効な選択肢となり得ます。

トランプ政権の次の100日

私たちの見解では、トランプ政権は株式市場の下落に対して比較的高い許容度を持っており、製造業の国内回帰などを含めた経済構造の転換に重点を置いています。関税発動の猶予期間を90日間延長した一方で、交渉の行方については多くを語っていません。政権は株式市場の動向への関心は薄いように見受けられますが、10年物米国国債利回りは注視しています。金利が5%を超えると、政府の資金調達コストが増大するだけでなく、製造業復活に向けた国内での設備投資も難しくなるためです。同時に、トランプ政権が掲げる規制緩和や法人税減税、特に設備投資を促す優遇策などが米国経済にもたらすであろうプラスの効果も考慮に入れるべきでしょう。

株式市場の見通し

S&P 500種株価指数は短期的には、直近の安値水準から5,400程度までのレンジ内で推移する可能性が高いと見ており、潜在的な景気後退(リセッション)入りが主要なリスク要因となっています。しかし、過去のデータを見ると、景気後退局面での株価下落は比較的小幅にとどまるケースもあり、現在の調整局面はすでにその水準に達しています。したがって、市場は悪材料の多くをすでに織り込んでいると考えられ、長期的な視点を持つ投資家にとっては、むしろ投資機会となる可能性があります。

ヘルスケア・セクターへの予算削減の影響

トランプ政権が最近打ち出したヘルスケア分野の研究開発予算の削減は、当初の計画よりも規模が大きく、セクター全体に悪影響を及ぼす可能性があります。特に、ベンチャーキャピタルは投機的でリスクの高い初期段階の研究には資金を出しにくいため、この資金不足を誰が、どのように補うのかが懸念されます。ゲイツ財団のような大規模な財団が支援に乗り出す可能性もありますが、必要とされる資金額は莫大です。こうした逆風はあるものの、ヘルスケア・セクターは景気変動の影響を受けにくい特性を持っています。人々が医療サービスを必要とすることに変わりはなく、ゲノミクス(遺伝子情報解析)、バイオテクノロジー、人工知能(AI)といった技術革新は、医療コストの削減や生産性の向上に貢献し続けています。

私たちの分析では、このセクター固有の底堅さと継続的な技術革新は、現在の不透明な状況を乗り越え、市場にまだ十分に評価されていない有望な企業を発掘しようとする株式投資家にとって、潜在的な投資機会があることを示唆しています。

関税と規制措置がテクノロジー・セクターに与える影響

年初の時点では、テクノロジー・セクターには強い楽観的な見方が広がっていました。しかし、関税の導入(とその後の発動一時停止)は、特にアジア地域にサプライチェーンを持つ企業を中心に、企業経営者の心理を冷やし、コスト構造の先行き不透明感を高めました。加えて、グーグルのような巨大テクノロジー企業に対する訴訟が現在も続いていることも、事業環境の不確実性を増幅させています。

こうした課題はあるものの、いくつかの有望な成長分野は依然として健在であると私たちは考えています。グーグルやアマゾンといった主要企業は、引き続きAI分野へ巨額の投資を行っています。「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる主要ハイテク7社(アルファベット、アマゾン、アップル、メタ、マイクロソフト、エヌビディア、テスラ)のファンダメンタルズと技術革新力は依然として強固です。さらに、様々な企業におけるAI活用への需要も根強くあります。私たちの分析によれば、AIがもたらす生産性の向上は計り知れないインパクトを持つ可能性が高く、米国はこの分野で世界をリードしています。

米国地方債市場と地方自治体

米国大統領選挙が近づく中で、地方自治体の税収の伸びには明確な鈍化が見られました。しかし、地方債市場全体としては、コロナ禍後の経済対策やインフレの進行が追い風となり、売上税や所得税の増収というかたちで大きな恩恵を受けてきました。これらの税収は、交通インフラ関連の部局なども含め、州・地方自治体にとって主要な財源であり、地方債の信用力向上に寄与しています。一部のセクターでは苦戦も見られますが、地方債全体の信用力は強固と見られ、2025年度予算で想定されていた控えめな成長予測を上回る状況となっています。こうした財政の安定性は、過去の困難な時期を通じて強化されてきた財政管理と相まって、今後のインフレ再燃や景気後退といった事態にも十分耐え得る備えが整っていることを示唆しています。地方債市場では、発行量の増加やそれに伴う多少の価格変動が見られるものの、多くの発行体が起債を通じて資金調達を行う準備はできています。もっとも、金利がさらに上昇すれば、こうした動きが鈍る可能性はあります。

注目すべき分野の一つに教育セクターがあります。高等教育機関は二極化が進んでおり、ハーバード大学やスタンフォード大学のような世界的に有力な大学がある一方で、経営に苦しむ地方の小規模なリベラルアーツ系の大学も存在します。過去2年間で多くの私立大学が閉鎖や統合に追い込まれており、これは過去に例を見ない状況です。トップクラスの研究大学においても、研究助成金の削減に対する懸念はありますが、これらの大学は損失を吸収できるだけの十分な財務基盤を有していると考えられます。

地方債の非課税措置が撤廃されるのではないか、という議論も一部で聞かれますが、もし実現すれば、借入コストの上昇などを通じて広範囲に影響が及ぶでしょう。しかし、地方債の非課税措置は、社会基盤(インフラ)整備に必要な資金を低コストで調達する上で不可欠な制度であり、議会内にも維持を支持する声は根強くあります。高等教育機関向け、民間活動債、ヘルスケア関連など、特定の分野が対象となる可能性は否定できませんが、地方債市場全体から非課税という優遇措置が失われる可能性は低いと見ています。

以上より、投資戦略としては、金利変動リスクを示すデュレーションは中立に保ちながらも、信用リスクを取ることでリターンを高めるアプローチ(多くの場合、相対的に年限が長く、格付けが低い債券への投資)により価値を見出せると考えています。また、市場が不安定になった際に、個人投資家によるパニック売りような局面を捉える投資機会も存在し、特に、価格が下落した割安な高格付け債を中心に、イールドカーブ(利回り曲線)全体で投資妙味が見出せるでしょう。

結論

株式市場、債券市場ともに不確実性と価格変動が続いていますが、現在の環境下には重要な投資機会が存在すると私たちは考えています。特にテクノロジー・セクター、中でもAI関連は引き続き力強い成長分野であり、米国企業が技術革新を牽引しています。このような状況では、個々の企業のファンダメンタルズにしっかりと着目することが極めて重要です。このアプローチこそが、現在の難局を乗り切り、市場におけるミスプライシング(誤った値付け)を捉える上で有効だと考えます。

リスクについて

すべての投資にはリスクが伴い、元本を失う可能性があります。

株式は価格変動リスクを伴い、元本割れの可能性があります。

債券は、金利リスク、信用リスク、インフレリスク、再投資リスクを伴い、元本割れの可能性があります。金利が上昇すると、債券の価値は下落します。債券の信用格付けの変更、または債券の発行体、保険会社、保証人の信用格付けや財務力の変化は、債券の価値に影響を与える可能性があります。信用格付けの低いハイイールド債は、価格変動性が高く、流動性が低く、デフォルト(債務不履行)に陥る可能性が高くなります。代替的ミニマム税(AMT、州および地方税が適用される場合があります。

テーマ別の投資機会を取り入れた投資戦略とそのパフォーマンスは、運用マネージャーがそのような機会を正しく特定できなかった場合、またはテーマが予期せぬ形で展開した場合に、悪影響を受ける可能性があります。ヘルスケア、テクノロジー、情報技術関連産業への投資集中は、より広範な産業に投資する戦略よりも、これらの産業における不利な展開や価格変動のリスクがはるかに高くなります。

コモディティ関連投資は、コモディティ指数のボラティリティ、投資家の投機、金利、天候、税制および規制の動向などの追加リスクにさらされます。

分散投資は利益を保証するものでも、損失に対する保護を提供するものでもありません。

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