2025年6月13日
スティーブン・ドーバー, CFAチーフ・マーケット・ストラテジスト
ヘッド・オブ・フランクリン・テンプルトン・インスティテュート
キム・カテキス
インベストメント・ストラテジスト
フランクリン・テンプルトン・インスティテュート
ラリー・ハサウェイ
グローバル・インベストメント・ストラテジスト
フランクリン・テンプルトン・インスティテュート
イスラエルによるイラン攻撃により、楽観視されていた外交シナリオとの隔たりが一層鮮明になりました。軍事的には、この行動がイランの核・ミサイル能力を大幅に抑制する可能性が高いと見られています。
資本市場では、以下の影響が見られます。
世界の石油供給が混乱する可能性:
イランは中規模の産油・輸出国であるため、今回の軍事行動を受けて原油価格は急騰し、1バレル当たり4〜5米ドル(約4〜6%)上昇しました。衝突が拡大すれば、ペルシャ湾岸の主要産油国からの原油・天然ガス供給が一層深刻な混乱状態となる恐れがあります。(訳者注:本稿は6月13日時点の情報に基づいています。本稿執筆後の6月14日〜15日にかけて、イスラエルがイラン国内の施設を攻撃したとの報道がありました。以下の分析を読む際には、この点を考慮いただきますようお願いいたします。)
安全資産への資金逃避:
中東での紛争激化はリスク・プレミアムを押し上げ、世界株式市場の下落要因となりました。ただし、紛争がこれ以上拡大しない場合、リスク・プレミアムおよび原油価格はいずれ落ち着くとみています。仮にイランの原油生産・輸出に支障が出ても、同国の世界シェアは限定的であるため、エネルギー価格への影響は軽微にとどまる見込みです。イランの生産量は日量約380万バレル(世界生産の約4%)、輸出量は日量約180万バレルで、残りは国内消費に回っています。¹
原油価格が小幅に上昇した場合でも、世界経済成長、インフレ率、企業収益へのインパクトは限定的と見込まれます。
ドイツや中国、米国における金融・財政緩和、米国の歴史的低水準の失業率と健全な家計バランスシート、さらに(関税影響の可能性はあるものの)インフレ率の鈍化傾向が世界景気を下支えすると見ています。私たちは、今回程度の小規模な「オイルショック」が世界経済の拡大基調やインフレ見通しを大きく転換させる可能性は低いと判断しています。
リスクシナリオ:ホルムズ海峡が封鎖されれば、イランの最大顧客である中国への輸出が停止します。
また、海峡の通航妨害は、サウジアラビアをはじめとする湾岸産油国の供給や、とりわけアジアの石油輸入国に重大な影響を及ぼします。
もっとも、世界の多くの地域では「オイルショック」への耐性が高まっています。米国は原油と液化天然ガス(LNG)の純輸出国であり、欧州では急速に電化が進展し、電力のほぼ半分は風力と太陽光でまかなわれています。加えて、中国政府も国家的なエネルギー安全保障の観点から、電化を喫緊の課題として推進しています。
結論:
堅調な世界経済は小幅な原油高に耐えられると判断し、基本的な投資見通しを見直す必要性は限定的だと考えます。なお、本シナリオは、地域・セクターを問わず株式リターンの裾野が広がり、金利が安定し、米ドルが緩やかに下落を続けるとの前提に立っています。
最後に、当社は軍事衝突による尊い人命の損失に深い哀悼の意を表するとともに、一刻も早い平和的解決を強く願っております。
脚注
1 出所:Statistical Review of World Energy, 2023年版。
リスクについて
すべての投資にはリスクが伴い、元本を失う可能性があります。
株式は価格変動リスクを伴い、元本割れの可能性があります。
国際投資には、為替レートの変動や社会・経済・政治情勢の不確実性といった固有のリスクがあり、結果としてボラティリティが高まる可能性があります。これらのリスクは、とりわけ新興国市場で一段と顕著になる傾向があります。
特定の国または地域の企業に集中投資を行う場合、地理的に分散された投資と比べて、より大きな価格変動が生じる恐れがあります。とりわけ中国への投資については、政府による経済への関与が依然として高いことから、他国と比較して規制リスクが相対的に高い点に留意が必要です。
コモディティ(商品)関連投資は、コモディティ価格指数の高い変動性に加え、投機的取引、金利、天候、税制・規制の変更など、追加的な要因によるリスクを伴います。
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