米大統領選挙はトランプ氏が圧勝

11月5日の米大統領選挙では、共和党のトランプ氏が民主党のハリス氏に大差をつけて勝利しました。

 また、同時に行われた議会選挙でも、共和党は上院と下院で過半数の議席を確保し、大統領職と上下両院の多数派を共和党が占める「レッド・スウィープ」となりました(図1)。年明け1月20日に発足する次期トランプ政権にとって、政策を推進しやすくなる体制が整ったと言えます。

市場はトランプ氏勝利に好意的な反応を示す

米大統領選挙後、トランプ氏の圧勝が判明するにつれて、市場では選挙の不確実性が消えたことでリスクオンのムードが広がり、株高が進行しました。米国株(S&P500指数)は選挙後に史上最高値を更新しています(図6)。

 もっとも、米国株の割高・割安度を判断する指標である予想PER(株価収益率)は、足元において23倍前後の高水準にあり、多くの好材料はすでに織り込まれつつある面もあります。前回トランプ氏が勝利した2016年の米大統領選挙直後の予想PERは17倍程度と、当時の米国株は現在と比べて割安に評価されていました(図7)。

今後は次期トランプ政権の政策の実行力が焦点

米国株の底堅い上昇基調が今後も政策の面で支えられるかは、市場が期待する次期トランプ政権の政策が着実に実行されるかにかかってくると考えられます。

 トランプ氏は選挙戦での公約として、①個人所得税減税等のトランプ減税の延長、②法人税率の引き下げ、③エネルギー・環境分野の規制緩和、④関税引き上げ、⑤国境・移民分野の規制強化、などを挙げてきました(図2)。

 今回の選挙の結果、レッド・スウィープが実現したことで、市場の関心が高い減税や規制緩和などの政策の推進には追い風が吹いていると言えます。一方、諸外国とのあつれきや米産業界への影響が懸念される関税引き上げについては慎重に検討される可能性がありそうです。

エネルギー・金融分野の規制緩和が注目される

年明けの次期トランプ政権の発足直後は、大統領権限で政策遂行が可能なエネルギーや金融の分野での規制緩和への注目が高まりやすいと考えられます。

 エネルギー分野では、連邦政府の所有地での原油・天然ガスの採掘規制の緩和や、バイデン政権が凍結した液化天然ガス(LNG)の輸出認可の再開などがエネルギー産業の活性化に繋がると期待されています。

 一方、金融分野では、大手銀行への資本規制緩和や、合併・買収(M&A)の認可規制の緩和などの面で、銀行業界が恩恵を受けるとの見方があります。バイデン政権下では米国企業をターゲットにしたM&A取引額は、コロナ危機後の2021年を除くと停滞が続いてきました(図3)。

トランプ政権はAI分野の規制緩和を打ち出すか

また、次期トランプ政権の政策では、人工知能(AI)分野の規制緩和策が打ち出されるかも焦点のひとつです。

 トランプ陣営は、AI開発において安全性試験を義務付けているバイデン政権の大統領令を撤回する方針を示しているほか、選挙戦ではAIインフラ整備のためエネルギー容量を拡大させる必要性を示唆してきました(土地や電力使用の許可要件が緩和される可能性)。

 近年、米国ではデータセンターへの建設支出が急拡大しており、データセンターの電力需要の高まりは電力分野での投資拡大にも繋がりつつあります(図4)。

市場はトランプ政権下での金利上昇リスクを懸念

一方、足元の市場の懸念材料として、次期トランプ政権での財政赤字拡大による金利上昇リスクが挙げられます。

 米大統領選挙後の11月7日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では0.25%の利下げ継続が決定されたものの、債券市場では先行きの利下げ期待の後退から米10年国債利回りは4.4%台まで上昇しています(図5)。市場は9月のFOMCで示された軌道よりも緩やかなペースでの利下げを織り込み始めており、利下げの最終到達点の予想も3%台後半の水準に切り上がりつつあります(図8)。

 今後、12月17-18日のFOMCなどで示される米金融当局の利下げの方針に市場の注目が集まりそうです。

アクセスランキング

※直近15日間で閲覧数の多いマーケット情報をランキングしています。

動画ライブラリー

マーケット情報やファンドの運用報告等を、動画でお届けしています。


サイトマップ
Top