2025年4月

ジェイク・ウィリアムズ
ヘッド・オブ・インターナショナル・オルタナティブ・プロダクト

アーサー・トムソン
オルタナティブ・プロダクト・ストラテジー・スペシャリスト

ピーター・ブルー
ヘッド・オブ・オルタナティブ・ソリューションズ

はじめに

エバーグリーン(オープンエンド) ・ファンドの登場により、プライベート資産へのエクスポージャーを構築する上で、投資家の選択肢は広がりました。プライベート資産にアクセスする際、まず検討すべき項目の一つは、投資ビークルとして、エバーグリーン型、クローズドエンド型、またはその両方の組み合わせの中から、最も効率的かつ適切なものを選択することです。

選択に当たっては、主にオペレーションおよび運用の観点から、複数の要因を総合的に考慮することが重要です。本稿では、エバーグリーン・ファンドとクローズドエンド・ファンドのそれぞれのメリットを比較検討し、これらを組み合わせることでプライベート資産への配分を最適化する方法を考察します。

オペレーション上の観点

これまで、クローズドエンド・ファンドは、特に機関投資家にとって、プライベート資産へのエクスポージャーを得るための主要な投資手段でした。しかし近年では、富裕層の投資家およびそのアドバイザーにおいても、こうした投資ストラクチャーに対する理解を徐々に深めており、以下のようなクローズドエンド・ファンド特有のオペレーションの複雑さについても認識されつつあります。

  • 募集申込:クローズドエンド・ファンドでは、コミッテド・キャピタル(出資約束額)方式が採用されています。投資家は募集申込契約を締結し、あらかじめコミットする金額に同意します。実際の資金拠出は、ジェネラル・パートナー(GP)が投資機会を特定した場合に限り、「キャピタル・コール(資金拠出要請)」という形で求められます。このため、投資家は短期間で拠出できる資金を常時確保しておく必要があります。
  • 投資期間:これらのファンドの投資期間は通常3~6年で、多くの場合、投資家はこの期間の前に資金を回収することはできません。投資期間終了後、回収が進むにつれて、資金は投資家に返還され、ファンドが保有するすべての資産が売却または回収されると、ファンドは終了します。継続的なエクスポージャーを求める投資家は、次のビンテージのファンドの立ち上げを待ち、改めてデューデリジェンスを行い投資を行う必要があります。
  • 解約:投資家は自由に解約して資金を引き出すことはできませんが、投資が回収されるにつれて分配金を受け取ります。

エバーグリーン・ファンドは、オペレーションの負担軽減とスケーラビリティの高さから注目されています。エバーグリーン・ファンドでは、投資家は最初に出資を行い、その後も追加出資や一部解約が可能です。この仕組みにより、複数のクローズドエンド・ファンドを通じてエクスポージャーを構築する場合と比較して、プライベート資産への目標配分をより安定的に維持しやすくなります。さらに、エバーグリーン・ファンドは、コミットメント・アンド・ドローダウン方式(出資を約束し、必要に応じて段階的に資金を拠出する仕組み)とは異なり、投資後すぐにプライベート資産へのエクスポージャーを提供します。

以下の表は、エバーグリーン・ファンドとクローズドエンド・ファンドの主な相違点を比較したものです。

主な違い

クローズドエンド・ファンドを利用する投資家にとって、複数のビンテージ・ファンドに資産を分散配分することは、キャッシュフローのタイミングを調整するために有効な方法です。この手法は、「ペーシング・プラン(pacing plan)」として知られており、より高度なキャッシュフローの予測と運用負担を要しますが、ポートフォリオの構築が完了すれば、プライベート資産へのエクスポージャーは、エバーグリーン・ファンドと同等となる可能性があります。

エバーグリーン・ファンドの潜在的なメリット

運用上の考慮

エバーグリーン・ファンドとクローズドエンド・ファンドを評価する際には、適切なパフォーマンス指標を用いることが重要です。一般的に、これらの指標はマルチプル(倍率)リターン・レート(収益率)の2つのカテゴリーに分類されます。

マルチプル(倍数指標)
マルチプルはファンドの絶対リターンを測定する指標であり、ファンド形態の違いにより適用方法が異なります。

  • 投下資本倍率(MOIC):総回収額を投下資本で割って算出される指標であり、両方のファンド・タイプに適用可能です。例えば、100米ドルを投資して回収額が150米ドルだった場合、MOICは1.5倍となります。
  • コミットメント・キャピタル倍率(MOCC):主にクローズドエンド・ファンドに適用される指標で、未実行のコミットメント額も含めて評価されます。マネジャーがいかに効率的に資本を投下し、リターンを生み出したかを示します。

仮想クローズドエンド・ファンドのMOICMOCCの比較(イメージ図)

一見すると、MOICだけを見るとファンドAの方が優れているように見えますが、ファンドBは投資家利益およびMOCCの両方で上回っており、このことから両方の指標を併せて評価することの重要性がわかります。

エバーグリーン・ファンドは、一般的にプライベート資産に対して85~90%の一貫したエクスポージャーを維持します。これに対して、クローズドエンド・ファンドは、10年間で平均して30~40%のエクスポージャーを達成するにとどまります。ペーシング・プランでは、プライベート資産へのエクスポージャーが徐々に増加し、10年間の平均で60~70%に達しますが、初期の数年間においてはエバーグリーン・ファンドと比べて大幅に低いエクスポージャー水準にとどまる傾向があります。

必要収益率に与える影響

このエクスポージャーの違いは、ファンド形態によって同じMOICを達成するために必要となる収益率に、どのような影響を与えるのでしょうか。

エバーグリーン・ファンドは全額出資済みでかつ資本の再投資が可能なため、クローズドエンド・ファンドに比べて、必要収益率を大幅に低く設定した場合でも、最終的には同等のMOICを達成できる可能性があります。ペーシング・プランを採用した場合であっても、プライベート資産に即座にエクスポージャーを提供するエバーグリーン・ファンドは、明確な優位性を持っています。ただし、エバーグリーン・ファンドのポテンシャルを最大限に引き出すには、マネジャーが市場サイクル全体を通じて優れた運用実績を有していることが、重要な要素となります。

結論と主なポイント

エバーグリーン・ファンドとクローズドエンド・ファンドの両方を組み合わせた資産配分は、プライベート資産への投資において、運用効率と投資の柔軟性を両立させる有効なアプローチです。

経験豊富な投資家にとって、クローズドエンド・ファンドは、解約に備えて流動性資産を待機させる必要がなく、純粋なプライベート資産へのエクスポージャーが得られる点は魅力です。オペレーション面での負担が増す可能性はありますが、初期のオンボーディング(ファンド参加手続き)やデューデリジェンスが完了すれば、その後の負担は大幅に軽減されます。

一方、エバーグリーン・ファンドは投資の柔軟性が高く、既に構築されたポートフォリオへの即時アクセスを提供し、定期的な追加出資と一部解約が可能です。このファンド形態は、流動性と資本管理の効率性を高めると同時に、投資家およびアドバイザーによる、ポートフォリオのリバランス、クローズドエンド・ファンドからの分配金の再投資、キャピタル・コールへのファンディング(資金手当て)といったオペレーション上の対応を容易にします。

結論として、エバーグリーン・ファンドとクローズドエンド・ファンドを組み合わせた資産配分によって、投資家はプライベート資産ポートフォリオの柔軟性を維持しつつ、投資目標の効率的な達成を図ることが可能になると考えます。最適な組み合わせ比率は、投資家固有のニーズや、対象とするプライベート資産クラスの特性(期待リターン、分配金見込み等)に応じて決定する必要があります。

巻末注記

  1. 解約の仕組みはファンドごとに異なり、運用会社の裁量に委ねられています。
  2. エバーグリーン – トータルリターン:当初より全額出資され、継続的な再投資を前提とした資金が目標MOICを達成するために必要とされる時間加重年率リターン。
  3. クローズドエンド – IRR:0年目に10万米ドルを1回限りコミットし、その後に追加コミットは行わないものとします。ファンドの存続期間は10年、投資期間は4年、キャピタル・コールは事前に定められたスケジュールに従って行われると仮定し、分配金はボウ・パラメーター2のTA(タカハシ・アレクサンダー)モデルに基づき算出しています。IRRは、目標MOICを達成するために必要なネットリターンを示しています。未投下資本は、年率5%の投資利益を生むと仮定しています。
  4. ペーシング・プラン – IRR:10万米ドルの初期コミットメントを3年間で均等に拠出し、その後は、上記のクローズドエンド・ファンドと同様の仮定に基づき、IRRの85%に相当する規模の追加コミットメントを毎年実施しています。

リスクについて

すべての投資には、元本割れの可能性を含むリスクが伴います。

オルタナティブ投資戦略への投資は、その複雑性および投機的性質から、重大なリスクを伴い、完全な投資プログラムとして位置づけられるべきではありません。オルタナティブ戦略への投資は、対象となるプロダクトによっては流動性が限定される場合があり、投資元本の全額を失う可能性があることを許容できる投資家のみに適しています。主に非公開企業に焦点を当てた投資戦略は、公開企業への投資と比較して、対象企業に関する情報の入手が困難であり、また、一般に低い流動性に起因する固有の課題や追加的なリスクを伴います。

主にプライベート資産に焦点を当てた投資戦略についても、同様に、対象資産に関して入手できる情報が限られていることや、一般的に低い流動性への対応といった点で、特有の課題や追加的なリスクが存在します。さらに、プライベート資産またはそれらに投資するビークルへの投資は、流動性が低いものとみなされるべきであり、確実なリターンが保証されない長期的なコミットメントを要する場合があります。また、企業が発行した証券が証券取引所に上場される保証はありません。そのため、一部の投資には流動性の高いセカンダリー市場が確立されていない可能性があり、このことが、当該投資の市場価値や、投資家が望ましいタイミングや価格で売却できる可能性に悪影響を及ぼすおそれがあります。

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