202411

インドラニール・カールレカール  

クラリオン・パートナーズ

グローバル・ヘッド・オブ・リサーチ&ストラテジー


ジュリー・ローモント  

クラリオン・パートナーズ

リサーチ・オフィサー

転換点に接近

米国経済は、高金利や地政学的リスクの高まりにもかかわらず、2025年に向けて引き続き堅調な位置づけを維持しています。労働市場は力強さと回復力を示し続け、インフレは緩やかながら低下傾向にあり、さらに連邦準備制度理事会(FRB)は政策金利の引き下げを開始しました。これは来年にかけてポジティブな経済モメンタムを生み出すと考えられます。

FRBが利上げを開始して以来、評価圧力にさらされてきた収益不動産も、中央銀行の金融緩和プログラムの恩恵を受ける立場にあります。NCREIF不動産指数1をご覧いただければわかるように、2022年第2四半期以来初めて、2024年第3四半期の米国の機関投資家向け不動産はプラスのリターンを記録しました。これは、転換点2に近づいていることを示唆しています。不動産価値は安定しつつあり、貸出市場は緩和傾向にあり、建設着工数は減少し、未投資の手元資金は過去最高水準に近い規模で待機しています。私たちの基本シナリオでは、概ね建設的な経済成長が見込れており、大統領選挙が終了しFRBの利下げサイクルが開始されたことで、2025年には投資家センチメントが改善し、資本市場の活動も活発化すると考えられます。

市場ファンダメンタルズを支える構造的な追い風

収益不動産のファンダメンタルズは、ほとんどのセクターで良好な位置にあります。オフィスとライフサイエンスを除き、空室率は一般的に長期平均を下回る水準にあり、純営業収益(NOI)の成長は引き続き堅調です。融資条件の厳格化、建設コストの上昇、要求リターンの増加により、特に産業用施設と集合住宅セクターにおいて、新規建設着工が大幅に減少しており、これは短期的な賃料成長を後押しするでしょう。

今後を展望すると、Aクラスの倉庫スペースに対する強い需要、比較的低い空室率、そして直近四半期における建設着工の急激な減少を考慮すると、産業用施設の賃料成長が他をアウトパフォームすると予想しています3。集合住宅市場の平均空室率は、ここ数年の記録的な完工数にもかかわらず、過去平均の水準付近で安定しつつあります4。集合住宅の着工数がピーク時から約40%減少していることから、供給の波が落ち着くにつれて空室率は低下傾向を示し、健全な賃料成長を支えるでしょう5。近隣型・コミュニティ型商業施設の建設は比較的停滞しており、2024年第3四半期の四半期施工件数は1990年以降で最低水準となりました6。その結果、このセクターの平均空室率は過去平均を大きく下回る水準を維持しています7。さらに、機関投資家の資金と関心は、オルタナティブ不動産セクターにシフトし続けています。

クラリオン・パートナーズは2025年に向けて、住宅不足、人口動態の変化、イノベーション、グローバリゼーションの変化、そしてレジリエンシーを含む複数の投資テーマに注目しています。

今後の見通し

クラリオン・パートナーズは2025年の収益不動産環境について、概して楽観的な見方をしています。より緩和的な金利環境、流動性の改善、そして健全な不動産のファンダメンタルズは、投資家にとって魅力的な投資機会を生み出すはずです。潜在的な投資リスクとしては、インフレの再加速、長期化する高金利、そして景気後退の脅威が挙げられます。そのため、投資家はマクロ経済の動向を注視し、新規投資を慎重に査定し、選択的に資本を配分することが賢明であると考えています。

巻末脚注

  1. NCREIF不動産指数(NPI)は、投資目的で保有されるプライベート収益不動産の四半期ベースの非レバレッジ総合トータルリターンです。指数は運用されておらず、直接投資することはできません。指数には手数料、経費、販売手数料は含まれていません。過去のパフォーマンスは将来の成果を示唆または保証するものではありません。
  2. 出所:NCREIF、2024年第3四半期
  3. 出所:CBRE-EA、2024年第3四半期
  4. 出所:CBRE-EA、2024年第3四半期
  5. 出所:米国国勢調査局、2024年第3四半期。分析:クラリオン・パートナーズ・インベストメント・リサーチ。注:着工トレンドを分析するため、米国国勢調査局の推奨に基づき、直近6ヶ月平均の着工率で計算
  6. 出所:CBRE-EA、2024年第3四半期
  7. 出所:CBRE-EA、2024年第3四半期

リスクについて

すべての投資は、元本割れの可能性を含むリスクがあります。投資の価値は下がることもあれば上がることもあり、投資家が投資した全額を取り戻せないこともあります。投資家はインデックスそのものに直接投資することはできません。インデックスのリターンは、手数料、経費、販売手数料を考慮していません。また、過去の運用実績は将来の結果を保証するものではありません。

株式は、個々の企業、特定の産業やセクター、または一般的な市場環境に影響を与える影響によって、急激かつ劇的に変動する場合があります。

国際投資は、通貨の変動や社会的、経済的、政治的な不確実性などの特別なリスクがあり、これによりボラティリティが増加する可能性があります。これらのリスクは、新興国市場で増幅されます。

商品および通貨は、市場、政治、規制、自然条件など、より高いリスクを含んでおり、すべての投資家に適するとは限りません。

不動産投資に伴うリスクには、賃貸物件の入居率や運営費用の変動、賃料スケジュールの変更などが含まれますが、これらに限定されません。これらは地域、州、国内、または国際的な経済状況によって悪影響を受ける可能性があります。このような状況は、不動産物件の需給状況、用途地域規制、賃料規制法、不動産税、資金調達の利用可能性とコスト、環境法規制などによる影響を受ける可能性があります。さらに、不動産投資は、地域的な懸念事項、政治的混乱、ソブリン債務危機、および保険非補償損失(主に地震、洪水、戦争などの大規模災害による損失)によって引き起こされる市場混乱の影響も受けます。資産担保証券(ABS)やモーゲージ担保証券(MBS)などの不動産関連証券への投資は、期限前償還リスクや期間延長リスクの影響を受けます。

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