相互関税を受けて米国株は本格的な調整局面に

 トランプ政権が4月2日に発表した相互関税が市場の想定よりも厳しい内容となったことで、米国株の調整圧力が強まっています。4月4日には中国が米国への報復関税を公表し、世界的な貿易戦争が深刻化する懸念を高めたことも、米国株の下落を助長する要因となりました。

 主要株価指数のS&P500指数は2月19日の史上最高値からの下落率が10%を上回り、米国株は本格的な調整局面に入っています(図1)。

米国の景気後退リスクを懸念する見方が広がる

 世界的な貿易戦争が深刻化しつつある中、市場では米国の景気後退リスクを懸念する見方が広がっています

 市場のエコノミストが予想する米国の景気後退確率のコンセンサスは依然として30%程度の水準にある一方、オンライン予測市場では足元で60%近辺の景気後退確率が見込まれ始めています(図2)。

FRBの予防的な利下げが米国株を下支えするか

 また、景気後退懸念の高まりから、先物市場では米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ観測が高まっています(市場は2025年末まで4回の利下げを織り込む、図3)。

 パウエル議長は足元で政策の様子見姿勢を示しており、早期の利下げの可能性は低いとみられる一方、2025年後半にかけて景気減速圧力が高まる局面ではFRBの予防的な利下げが米国株を下支えする可能性があります。

当面の注目は関税交渉の行方に集まる

 当面の注目はトランプ政権と主要貿易相手国の関税交渉の行方に集まります。中国は米国へ報復関税を公表するなど強気姿勢を維持している一方、ベトナムや台湾は対米輸入関税の撤廃を提案したほか、日本や欧州連合(EU)なども関税回避に向けて米国との協議を進める方針を示しています。もっとも、トランプ政権は関税についての強硬姿勢を崩しておらず、主要国への相互関税が実際に撤回・修正されるかは慎重に見守る必要がありそうです。

過去の調整局面入り後の米国株の経験則

 図4は過去、米国株が直近高値から10%以上下落した調整局面における株価の推移を示したものです。1990年以降、米国株は全11回の調整局面を経験しており(今回の局面は除く)、株価の下落開始からピークの水準を回復するまで平均して461日(約1年3ヵ月)を要しました。

 ただし、過去の調整局面の経験則では、景気後退が回避されるかどうかによって、その後の米国株の回復ペースに大きな差が生まれる傾向が示されています。

景気後退局面では株価の低迷が長期化する傾向

 景気後退が回避された調整局面では、米国株は下落が始まってから約7ヵ月後(209日後)にピークの株価水準を取り戻すなど、比較的早期の回復がみられました。一方、景気後退を伴った調整局面では、企業業績などファンダメンタルズの悪化などから米国株の回復は鈍く、株価の低迷が長期化する傾向がみられました。

 なお、今回の局面での株価の下落幅は、過去の景気後退を伴った調整局面の平均を上回っており、トランプ政権の関税政策に対する市場の懸念の高さを物語っています。

景気後退シナリオにも備えた分散投資の重要性

 こうした過去の経験則を足元の市場環境に当てはめてみると、「①トランプ関税の修正・撤回による株価の回復シナリオ」と「②政策の混乱が当面継続する株価低迷シナリオ」の双方を慎重に見極める必要がありそうです。

 ただ、トランプ政権の関税政策をめぐる不透明感や、景気後退リスクへの懸念の高まりを考慮すると、今後の米国株への投資にあたっては景気後退の可能性にも備えた分散投資を進めることが重要になるとみられます。

景気後退リスクへの耐性が高い米国高配当株

 こうした中、「景気後退リスクへの耐性」という面からは、分散投資先として米国高配当株が見直される余地が大きいと考えられます。

 過去の米国株の調整局面においては、米国高配当株も当初は米国株に連れて下落したものの、その後の回復局面では安定した上昇傾向がみられました(図5)。特に景気後退を伴った調整局面では、景気動向に左右されにくい業績や配当のディフェンシブ性の高さを背景に、米国高配当株は米国株を上回る底堅い回復を示してきました

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