米国株は関税ショックを乗り越えて最高値を更新

 2025年前半の米国株式市場は、トランプ関税ショックや中東情勢の悪化といった逆風を乗り越え、S&P500指数は史上最高値を更新しました(図1)。

 2月から4月にかけては、関税政策をめぐる不透明感が株価の調整要因となりましたが、トランプ政権が中国をはじめとする主要国との関税交渉で融和的な姿勢を見せ始めたことで、市場は関税問題への耐性を強めつつあります。

利益予想の下方修正の一巡も株価の下支え要因

 関税への懸念が和らいだことで、米国景気に対する悲観的な見方も後退しています。市場が予想する米国の景気後退確率は、4月時点の45%から6月には35%へ低下し、米国景気の軟着陸の可能性を示唆しています(図2)。

 また、足元において米国株の利益予想の下方修正が一巡していることも、企業業績の面から米国株の回復を支える要因になっていると言えます(図3)。

 ただし、米国の経済活動や企業業績は依然として力強さを欠いており、トランプ政権の政策運営にも不透明感が残されています。このことから、2025年後半の米国株への投資に当たっては、「攻め」と「守り」のバランスを意識した分散投資が重要になると考えられます。

米国株式市場でのマグ・セブンの影響力が低下

 また、2025年前半の米国株式市場では、大手ハイテク株の影響力が低下しつつあることが特徴的となっています。

 2024年には米国株(S&P500指数)のトータルリターンの53.8%はマグニフィセント・セブン(大手ハイテク企業7社)によるものでしたが、2025年1-6月にはその寄与は15.2%まで大きく低下しています(図10)。

 これは米国株が史上最高値を更新する中で、幅広いセクターや銘柄に物色が広がっていることを示しています。以下、2025年後半の米国株の注目テーマである、AI投資の活性化FRBの利下げ再開の恩恵③金融規制の緩和と銀行株の復活、について解説します。

注目テーマ①:トランプ政権下でのAI投資活性化

 第一に、2025年後半の米国株式市場では、AI投資の活性化が再び注目テーマとなる可能性があります。

 米大手ハイテク企業は、引き続きデータセンターなどAIインフラへの積極的な設備投資を継続する姿勢を示しています。2025年6月末時点の市場予想によると、大手ハイテク企業4社の設備投資額は、2025年に3,000億米ドル台に拡大する見通しです(図4)。さらに、米半導体大手マーベル・テクノロジーが2025年6月に公表した資料によれば、米ハイテク業界全体のデータセンター関連設備投資は、2025年に5,930億米ドルに達すると見込まれ、2028年には1兆米ドルを超えるとの見方もあります(図5)。

トランプ政権下でAIインフラ投資計画の公表続く

 トランプ政権のもと、米国内では新たなデータセンター建設計画の発表が相次いでいることも、今後のAI投資の活性化を後押しする要因になりそうです。

 ソフトバンクグループやオープンAIなどが主導する「スターゲート・プロジェクト」では、今後4年間で5,000億米ドル規模の投資が計画されています。また、メタ・プラットフォームズもAIの高度化に向けたインフラ整備に数千億米ドルを投じる方針を示しています。このほかにも、米国内外の企業や投資家による大規模なデータセンター整備計画が次々と明らかになっています(図6)。

 また、トランプ政権は723日、規制緩和やエネルギー供給拡大を柱とした「AI行動計画」を公表し、政策の面からもAI開発の強化を後押しする姿勢を示しています

AIの恩恵をめぐり銘柄選別が活発化する可能性

 こうした米国でのAIインフラ投資の拡大は、米国株の幅広いセクターや銘柄に恩恵を及ぼすことが期待されます。

 前述のとおり、市場では大手ハイテク株の影響力が徐々に低下しており、今後はAI関連の成長期待に応じた銘柄選別の動きが活発化する可能性があります。これまでAI分野の勝ち組とされてきた大手ハイテク企業も、コスト上昇や競争激化に直面しており、今後は、AI分野での後発組の中堅ハイテク企業や、電力・エネルギーなどの関連セクターにも見直しの動きが広がるかが焦点となりそうです。

注目テーマ②:FRBの利下げ再開の恩恵

 第二に、金融政策の面では、2025年後半に米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ再開が見込まれ、米国株への金融緩和の恩恵への注目が増す可能性があります。

 現在の市場予想では、米国の政策金利は2026年末までに3%台前半まで引き下げられるとの見方が大勢となっています(図7)。さらに、パウエルFRB議長の任期が2026年5月までであることから、トランプ政権からの利下げ圧力を背景に、議長交代を契機として2026年に利下げが一段と進むとの思惑も強まりつつあります。

 今後、FRBが利下げを再開すれば、いわゆる「金融相場」が再び到来し、米国株全体、特に金融セクターなどにとって追い風の市場環境が生まれることが想定されます。

注目テーマ③:金融規制の緩和と銀行株の復活

 第三に、トランプ政権の金融規制緩和やM&A取引の復調が米銀行株の復活を後押しすると期待されます(図8)。

 FRBは6月25日、大手銀行に対する自己資本規制の緩和案を公表しました。これが実現すれば大手銀行には余剰資本が生まれ、融資拡大の余地が広がるとみられています。さらに、6月27日には、FRBが大手銀行のストレステスト(健全性審査)の結果を発表し、「大手銀行は深刻な景気後退に耐えられる態勢にある」ことが示されました。ストレステスト通過によって自己資本の余裕が生まれ、今後は大手銀行による増配や自社株買いなど株主還元策が活性化することが見込まれます。

 加えて、足元では米国企業のM&A取引が復調の傾向にあることも、事業環境の改善という観点から米銀行株への見直し材料となる可能性がありそうです(図11)。

規制緩和はオルタナ運用業界にも広がる可能性

 また、トランプ政権の金融規制の緩和は、オルタナティブ運用業界にも波及する可能性が高まっています。

 現在、トランプ政権は確定拠出年金(401k)におけるオルタナティブ投資の普及を促進するための大統領令を検討中と報じられています。規制緩和が業界の成長機会につながるとの期待から、米国のオルタナティブ運用会社の株価も足元では回復基調が強まりつつあります(図9)。

)当資料中の個別銘柄の事例は市場の理解を深めるためのものであり、特定の銘柄の売買推奨等を行うものではありません。

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