豪州株は2024年1月に史上最高値を更新

2023年の豪州株は、豪州準備銀行(RBA)が積極的な利上げを続ける中、金利上昇懸念から軟調な展開となりました。ただし、2023年末にかけては豪州の利下げ観測の浮上をきっかけに、豪州株は上昇基調に転じました。

2024年初の豪州株は上昇傾向が維持され、主要株価指数のS&P/ASX200指数は1月末には節目の7,600ポイント台に到達し、史上最高値を更新しました(図1)。

豪州株は史上最高値圏でも割高感は限定的

足元の豪州株は史上最高値圏にある中でも、割高感は依然として限定的に留まっている模様です。

代表的なバリュエーション指標である12ヵ月先予想PER(株価収益率)で比較すると、2024年1月末時点で豪州株は17.2倍の水準にあり、米国株の21.0倍と比べて相対的な割安感が残されています(図2)。

また、株式市場の総合的な割高・割安度を測るバフェット指標を見ても、豪州株は経済力と比較して引き続き過小に評価されていることが示唆されています(図3)。

今後、豪州株の出遅れ感が解消に向かうかどうかを巡っては、次の3つの見直し材料が注目されそうです。

①緩和に向かう豪州の金融・財政政策

第一に、豪州の金融・財政政策の緩和の行方です。

金融政策の面では、2022年5月に始まったRBAの利上げは2023年に一巡しており(政策金利は4.35%に到達)、2024年には利下げへの転換が見込まれます。

RBAは2024年2月6日の理事会で政策金利を据え置き、「政策金利の行方はデータ次第であり、さらなる利上げの可能性も否定できない」と慎重な政策姿勢を示しました。

もっとも、今後、豪州のインフレの一段の鈍化が確認されれば、RBAが利下げに傾く可能性が高いと考えられます。市場では2024年10-12月期からの利下げ開始が見込まれており、2026年央には政策金利は3.10%まで引き下げられることが予想されています(図7)。

豪州政府は2024年7月から所得税減税を計画

一方、財政政策の面では、2022年度(2022年7月~2023年6月)の豪州政府の基礎的財政収支が15年ぶりの黒字に転換し、緩和余地が拡大しつつあります(図4)。

こうした中、豪州政府は1月25日、2024年7月から導入する所得税減税策を公表しました。今回の所得税減税策はもともとは2018年に法制化された減税策の第三段階に当たり、アルバニージー政権は低・中所得層に減税の恩恵が行き渡るよう税率区分の修正を行いました。豪州議会予算局によれば、2024年度の所得税減税の規模は233億豪ドル(約2.3兆円*)と見込まれており、これは豪州の名目GDPの0.9%程度に相当します(図8)。

2024年後半以降、RBAの利下げと所得税減税によって豪州景気が押し上げられることが期待されそうです。

②豪州企業の業績回復と配当還元への見直し

第二の注目ポイントは豪州企業の業績回復の行方です。

豪州では底堅い人口増加や金融・財政政策の緩和効果などに支えられ、2024年度以降、内需セクターを中心に企業業績の回復が予想されています(図5)。

また、豪州の企業業績の回復は配当による株主還元の強化に繋がる可能性もあります。足元でも、豪州株の予想配当利回りは4%台の水準にあり、インカム資産としての豪州株の投資魅力には見直しの余地がありそうです(図6)。

③年金資金の流入が豪州株を安定的に下支え

第三に、国内外の投資家からの資金流入に支えられ、豪州株の安定した需給環境が続くかに注目が集まります。

豪州株の主体者別保有残高の推移を見ると、近年は豪州のスーパーアニュエーション(年金基金)の存在感が高まる傾向にあります。2023年9月末時点での豪州株の保有シェアは、海外投資家(33.5%)に次いで年金基金が26.6%を占めています(図9)。

業界予測によれば、スーパーアニュエーションの総資産は2023年9月末の3.6兆豪ドル(約350兆円*)から2035年には6.1~8.5兆豪ドル(約592~825兆円*)に拡大が見込まれており、中長期的に年金資金の流入が豪州株の安定的な下支え役となることが期待されます(図10)。

(*)1豪ドル=97円換算


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