2024年12月
スコット・グラッサーチーフ・インベストメント・オフィサー(CIO)
クリアブリッジ・インベストメンツ
主なポイント
- 当社は、2025年の米国株式市場が2024年と比較して控えめながらもプラス圏で推移すると予想しています。それを支える要因は、潤沢な流動性、健全な企業収益、そして成長促進および規制緩和政策への期待がもたらす投資家心理の活性化です。
- 当社は現在のファンダメンタルズの持続可能性を評価するとともに、この好環境に影響を及ぼす可能性のあるリスクを注視しています。最大のリスクは短期的な強気姿勢の過熱と、長期的には過剰な利下げ期待があることだと考えています。
- 生成AI投資サイクルで最も恩恵を受けた大型株銘柄は短期的には停滞の可能性がある一方で、経済全体の成長が継続する中で、小型・中型株、さらにはより景気敏感な銘柄を組み込んだ分散型のポートフォリオが恩恵を受けると予想します。
株式は歴史的に力強いパフォーマンスを示す
S&P 500指数は1月から11月までで28%上昇し、1997年以来で2番目に強い年初来11カ月のパフォーマンスとなり、史上最高の上昇率の一つとなっています。過去12カ月のリターンは34%に達し、1989年以降の1年間リターンで上位5%に位置するほどの好成績です。これほどの上昇は「驚異的」という表現以外にあてはまりません。
ドナルド・トランプ氏が2期目の大統領任期で減税や規制緩和を進めると期待される中、市場は生産性向上や今後数年にわたる設備投資の拡大を織り込みつつあります。当社の見解では、トランプ勝利後の初期効果は2016年時と同様に、バリュー株、小型株、景気敏感株を優位にする可能性があります。ただし、今回は経済状況がより成熟し、バリュエーションが既に高水準であるため、その効果はより限定的になると見ています。市場の内部構造、つまり異なるセクター、スタイル、時価総額が全体のリターンに寄与している状況を見ても、株式市場の上昇が幅広い基盤に支えられており、健全な投資環境を示していることが確認できます。
強気相場・弱気相場を決定付ける主要因は流動性だと当社は考えていますが、現状、その流動性は潤沢です。クレジット・スプレッドは史上最低水準付近にあり(図表1参照)、資本市場の資金調達環境も極めて良好です(ハイイールド社債発行は1~10月累計で前年同期比+44%)。さらに、イールドカーブは2年ぶりに順イールド化しました。こうした状況下で投資家心理が旺盛になり、期待が高まるなか、当社は現在のファンダメンタルズがどれほど持続し得るかを精査するとともに、長短両方のリスクを注視し、この好ましい市場環境に影響を与える可能性を見極めることに注力しています。

過去12カ月で株式リターンを最も押し上げた原動力は、企業収益が、(当社を含む)ほぼ全ての減速予想を覆して底堅さを維持したことです。ボトムアップによる2025年の利益予想は14.6%増加となっており、年が進むにつれてやや下方修正される可能性はあるものの、当社は財政支出の継続、生産性向上、安定した雇用動向および賃金上昇に支えられた堅調な経済成長を予想しています。トランプ政権による政策変更の可能性は、現状の市場バリュエーションにある程度織り込まれているとみられ、プラスとマイナス両面を含むこれらの要素は時間経過とともに明らかになっていくでしょう。とはいえ、規制緩和による投資活性化やM&Aの増加が起きれば、資本市場にはプラス要因となると期待します。
長期的なリスクについて言えば、主な懸念は、投資家による金利低下への期待が強すぎることであり、それが株式市場のより高いリターンを抑制する要因となる可能性があるということです。今後の実質金利は、多くの株式投資家が基準としている金融危機後の水準ではなく、より長期的な歴史的水準に沿ったものになる可能性が高いと考えています。特に、財政支出や国債発行量の拡大が見込まれる中では尚更です。株式市場はこれまでのところ、高い割引率を吸収してきましたが、金利環境への段階的な適応や将来の政策不確実性が、2025年の株式リターンを今年以上に大きく左右する可能性があります。
短期的には、投資家の期待が過度に楽観的(つまり強気に偏りすぎている)点を懸念しています。インベスターズ・インテリジェンスのブル・ベア・レシオやシティのパニック・ユーフォリア・モデル、現在のプット・コールレシオなど、多くの調査指標が強気心理の過熱を示しています。歴史的に、こうした指標は逆張りシグナルとなり、短期の平均以下のリターンに先行して現れる傾向があります。しかしながら、高い市場センチメントは、高い市場バリュエーションと同様に、それ自体が市場の弱含みを保証するものではなく、むしろ市場が調整を受けやすい先行条件を作り出すということに注意すべきです。地政学的リスク、不適切な政策判断、予想外の企業収益や金利動向といった「火種」が、こうした過熱感を調整へと導く引き金となる可能性があることに留意が必要です。

最後に、当社は生成AIのインパクトが今後10年にわたり画期的な技術と投資機会を生むと考えています。しかし、この分野で先導する企業群は既に極めて高い収益期待を織り込んでおり、ボラティリティに直面する可能性があります。これらの企業は最近の上昇を消化する過程で、不連続的な普及速度、変化するビジネスモデル、予測困難なボトルネック、投資回収への不確実性といった現実と向き合うことになるでしょう。幸いなことに、過去3~6カ月間で投資家はS&P 500内の他のサブセクターにも関心を広げており、これが市場全体のさらなる上昇に寄与しています。
当社は、2025年が潤沢な流動性、健全な企業収益、成長促進および規制緩和的な政策への期待がもたらすアニマルスピリッツに支えられ、控えめながらもプラスの年になると見ています。長期的なファンダメンタルズは依然として堅調で、小型・中型株や景気敏感銘柄を含む分散型のポートフォリオが、経済のさらなる成長から恩恵を受けるとの期待も変わりません。ただし、過熱気味な投資家心理と多面的で不確定なリスクを踏まえると、1年を通してボラティリティが高まる可能性があります。こうした変動局面は、長期投資家にとっては買いの好機となるかもしれません。
定義
S&P 500種指数:米国の主要な株価指数で、ニューヨーク証券取引所やNASDAQに上場している代表的な500銘柄で構成されています。市場規模、流動性、業種などを考慮して選定されており、米国経済全体の動向を反映する指標として広く利用されています。
CBOE プット・コールレシオ:インデックス・オプションとエクイティ・オプションを含む総合的なプット・コール比率です。市場心理の指標として用いられています。プット・コールレシオが高水準になると市場の過剰な弱気を、低水準になると市場の過剰な楽観を示唆すると考えられています。そのため、逆張りのシグナルとして利用されることが多いです。
リスクについて
すべての投資には、元本欠損の可能性を含むリスクが伴います。過去の運用実績は将来の運用成果を保証するものではありません。投資家はインデックスに直接投資することはできません。インデックスには、手数料、費用、販売手数料は反映されていません。
株式は価格変動のリスクがあり、元本を失う可能性があります。大型株は、市場環境や経済状況によって投資家から敬遠される可能性があります。小型株・中型株は大型株と比較して、より大きなリスクとボラティリティを伴います。
コモディティや通貨への投資には、市場リスク、政治リスク、規制リスク、自然条件に関するリスクなどの高いリスクが伴い、すべての投資家に適していない可能性があります。
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