2024年の米国株は後半に株高のすそ野が拡大

2024年の米国株を振り返ると、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げや米大統領選挙などの重要イベントを乗り越え、年間を通して株価の上昇基調が続きました(図1)。

2024年前半は人工知能(AI)ブームを背景に、ハイテク・セクターが米株高を主導しました。同時に、「マグニフィセント・セブン」など大手ハイテク株への集中リスクや、ハイテク・セクターの収益鈍化リスクへの懸念も浮上しました。

2024年後半には、FRBの利下げと米大統領選挙に市場の注目が向かい、政策の恩恵への期待から金融や公益事業、消費関連などの幅広いセクターに株高のすそ野が拡大しました。また、政策転換に伴う不安定な市場環境において、安定した株主還元を継続する米国高配当株への見直しの動きもみられました(図6)。

大統領選挙を受けて米国株の独り勝ちの様相に

トランプ陣営の圧勝となった11月の米大統領選挙を受けて、米国株式市場では政治的な不透明感の解消から好意的な反応が広がりました。次期トランプ政権の財務長官など主要経済閣僚にウォール街からの人材登用が公表されたことも、株高を後押しする要因となりました。

また、「米国第一主義」を掲げる次期トランプ政権誕生を見据え、大統領選挙後の世界の株式市場では米国株の独り勝ちの様相が強まりつつあることも特徴的です(図2)。

2025年の米国株は政策の追い風が期待される

2025年の市場環境は、FRBの利下げ継続と次期トランプ政権の規制緩和・減税の推進などを背景に、政策の面から米国株への追い風が吹きやすいと考えられます。

FRBの金融政策は、2025年を通じて3%台半ばの水準への利下げの継続が見込まれています(図7)。過去の経験則では、景気後退が回避されながら利下げが進められた局面において米国株は堅調な上昇を示す傾向がみられました。今回の局面においても、2024年9月の利下げ後の米国株は順調な滑り出しとなっています(図8)。

①次世代の高配当株としてのハイテク株の魅力

また、2025年の米国株式市場の注目トピックとして、次の3つを挙げることができます。

第一に、2025年はハイテク・セクターの配当還元の動きが改めて見直される可能性があると考えられます。

2024年は年後半に配当・インカム株型ETF(上場投資信託)への資金流入が拡大するなど、高配当株への市場の注目の高まりが示唆されました(図9)。伝統的に高配当株への投資は、事業の安定性と増配の継続性が高い生活必需品などのセクターが中心となってきました(図10)。

こうした中、2024年にはアルファベットやメタ・プラットフォームズ、セールスフォースが初の配当支払いを公表するなど、ハイテク・セクターの中でも事業の安定化に伴って配当還元を重視する傾向が広がりつつあります。足元ではハイテク株が米国株の配当の成長のけん引として浮上しており、次世代の高配当株としてハイテク・セクターが再評価されることが期待されます(図3)。

(※)本レター中での個別銘柄への言及は市場の理解を深めるためのものであり、特定の銘柄の売買推奨等を行うものではありません。

②データセンター投資の恩恵は周辺産業に広がる

第二に、AI開発とデータセンターへの投資拡大の潮流は2025年も継続する可能性が高く、その恩恵は半導体などハイテク分野に留まらず、電力やエネルギー、不動産など周辺インフラ産業に広がることが期待されます(図4)。

特に足元ではデータセンターの膨大な電力需要を支える資源として天然ガスへの注目が増しています。発電所へガスを供給するパイプライン運営企業(MLP)の株価は業績拡大期待の高まりから堅調な上昇が続いています。

③利下げと規制緩和で活性化する金融セクター

第三に、FRBの利下げやトランプ政権の規制緩和の推進を背景に、金融セクターの活性化が焦点となりそうです

1月20日のトランプ政権の発足後は、大統領権限で政策遂行が可能な金融分野の規制緩和の行方に市場の注目が集まると考えられます。FRBの利下げ継続の追い風もあり、2025年は米国企業の合併・買収(M&A)取引が活発となり、大手銀行やプライベート・エクイティ(PE)ファンドなどの収益機会の拡大が期待されます(図5)。

アクセスランキング

※直近15日間で閲覧数の多いマーケット情報をランキングしています。

動画ライブラリー

マーケット情報やファンドの運用報告等を、動画でお届けしています。


サイトマップ
Top